クシーくん

サムライせんせいのクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

サムライせんせい(2017年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

幕末の攘夷志士、武市半平太が現代にタイムスリップした事で巻き起こる騒動を描いたコメディ…なのか?これは。元は同名の漫画が原作で、本作公開時点では完結していなかったので、随分思い切った(と言っていいのか分からないが)見切り発車をしたものである。2020年に最終話を迎えた原作とは大きく異なる展開になっている。錦戸亮主演でドラマ化もされており、それだけ期待されたコンテンツだったのだろうか。
高知県観光映画の趣で、名所が出てきて地元の皆さんはきっと大喜びだった事だろう。きっと本作公開時には幟を立ててあのサムライせんせいのロケ地!とかやってたんだろうなあ。

過去から事実上の異文化にやってきたという点ではテルマエロマエか、はたまた当地でその変わった風貌と弁舌で人気を集めていく様はポリティカルじゃない帰ってきたヒトラーをポジティブにしたような作風でもある。つまりよくある異世界(?)物と言ってしまえばそれまでだが、武市先生19世紀後半から来たばかりにしては順応性が早い。折角カルチャーギャップネタなんだから、もうちょっと変な事させてコメディに振っても良かった気がする。タイムスリップした原因が特に明かされておらず、この映画の終着点が見えない。別にタイムスリップした原因など見せる必要は無いし、見たくもないのだが、未来の日本で武市先生がどう生きるのかを上手く提示出来ないまま、貰い事故のような形で帰ってしまったのが、やや後半で脚本の減速を感じた。また、武市半平太と言えば吉田東洋の暗殺、という事で後ろ暗い暗殺者としての側面を描いてはいたが、武市先生が暗殺を指示したのは別に東洋だけじゃないしなあ。以蔵の描写も中途半端で、濁した感は拭えない。現代的な倫理観からはお世辞にも褒められない過去を持つ武市先生が、過去と向き合い、現在を学ぶ事で、未来に向かって生きる子供達とどう向き合うのかまでしっかり描き切って欲しかった。

汚い獄舎から突如タイムスリップしたばかりの半平太先生の薄汚さは真に迫っていた。今日びホームレスでももうちょっと小綺麗にしているだろうと思わせる、臭そうな風貌の武市メイクに気合が入っている。

絵に描いたような不良と戦う武市、龍馬のシーンはダサ過ぎるが、意外とアクションはしっかりしていて、見応えがあるのが笑う。

市原隼人の存在感は流石。くどくて暑苦しい武市先生がピッタリはまっていた。本作がデビュー作であるという武イリヤ。可愛い。もっとメジャーになればいいのに。
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