ロックウェルアイズ

女王陛下のお気に入りのロックウェルアイズのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.1
18世紀のイングランド。
病弱だが気まぐれな女王アンが治めるこの国では、アンの幼馴染で身辺の世話をするレディ・サラが絶大な権力を握っていた。
そんなある日、没落貴族の娘アビゲイルが宮廷にやって来る。
アビゲイルはレディ・サラに取り入って、次第にアン女王に近づいていくのだが……

『哀れなるものたち』の予習として鑑賞。
Disney+でしか配信が無かった本作。最新作公開に合わせてなのかNetflixで配信し始めてくれたこと、本当に感謝です。

いつもに比べると少し毒気が薄くて商業作品って感じがするけど、やっぱりヨルゴス・ランティモスって感じ。
一言で言うなら宮廷の女たちの愛憎溢れるドロドロバトルなのかもしれないが、よく考えるとこの作品において男性という存在はご飯のお供、お新香くらいのもので、物語は圧倒的に女性主軸で描かれているのが印象的。
あくまでも男が主軸にある昼ドラような愛憎劇とは一線を画している。
ドロドロといっても派手なことは一切ない。
殺しもなければ罵り合うとかでもない。
静かに、したたかに、そして下品に。
歴史モノといってもただの時代劇ではない。
衣装もセリフも現代調。
洗練された映像・演出と現代にも通ずる人間の生々しさの交差が素晴らしかった。

そしてなんといっても、オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズの3人の演技合戦が凄かった。
特にオリヴィア・コールマン。
個人的には『ファーザー』の印象しかなかったからかなり衝撃だった。
何が凄いって、イングランド女王でありながらプライベートでは「文句ばっかり言ってる痛風持ちのおばさん」でしかない。
当時の王室の実際を知らないけれど、こういったところもやけに生々しい。
そうかと思えば、表舞台に立つ時にはしっかり威厳のある女王陛下なのだ。
アカデミー賞主演女優賞獲ったらしいけど、納得しかない。
エマ・ストーンもレイチェル・ワイズも気合い入ってて素晴らしい演技だったが、その2人が霞む程の存在感で、ラストでも描かれる絶対不可侵な王の権威というものを体現されていた。ブラボー。

今回もランティモスらしさ満載で良かった。
例えば毎度お馴染みヘンテコダンスに、今回の動物はウサギで、オレンジ投げつけられる男なんか意味不明すぎて大好きだわ❤️
好きな監督の最新作でもあんまり期待しすぎないようにしているが、『哀れなるものたち』は期待しすぎて楽しみで死にそうなので、早く観ないと!!!