Keigo

リバー・オブ・グラスのKeigoのレビュー・感想・評価

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)
4.4
『ミークス・カットオフ』で一撃で仕留められて以来、気になる存在のケリー・ライカート。今年のTIFFにヴィム・ヴェンダースと共に日本に来てたらしく、あまりに俺得の面子だったのでシンポジウム的なの行きたかったけど全然チケット取れず。

でも前から気になってた『ファースト・カウ』も12月から日本公開されるみたいだしまぁいいかと思っていたら、ケリー・ライカートの初期作品らへんが配信で観れるようになってる!(前から観れる状態だったっけ…?)ケリー・ライカート盛り上がってきてる!そんな流れで今作『リバー・オブ・グラス』を。

やっぱり好き。
すんごい好き。
なんかすごい共感してしまったなあ…

閉塞感、諦念、疎外感、孤独。
このまま一生、何も起こらないんじゃないかと思うぐらい平穏な日々。当たり前のように晴れ渡る青い空と陽光降り注ぐシアトルの街並み。それらをありがたがったり愛でたりする時間のゆとりはあっても、心のゆとりがない。人生お先真っ暗としか思えない。それがなぜなのか、どこで間違ったのか、何に追われているのか、どうすれば満たされるのかも何も分からない。そうやってただ、時が過ぎていく。

そうなんだよな、人生そんなにドラマチックなことなんて起きないんだよな。
その一瞬ものすごくヒリつくような、生きていることを実感出来るような、自分の人生にもこんな瞬間がついに…!みたいなことも、肩透かしに霧散していったりするんだよな。でも心のどこかで、ここではないどこかへ自分を連れて行ってくれる出来事をいつまでも期待していて、そうしているうちに気付いたら、こちら側とあちら側の境界線を彷徨いている。

そんな漠然とした得体の知れない何かに自分の全体を覆われながら、今日も自分の機嫌を取ってごまかしながら生きているその実感が、ひしひしと伝わってきた。

これがケリー・ライカートのデビュー作か…
やっぱり好きな監督だ。
Keigo

Keigo