IMAO

時時巡りエブリデイのIMAOのネタバレレビュー・内容・結末

時時巡りエブリデイ(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

コレとても気に入りました。インディーズで限られた時間と予算の中で「日常」にドラマを見出す塩出太志監督の手腕に、すっかり笑わされたり振り回されたりしました。

実家でほぼニートとして暮らす美鳥は、自宅から望遠鏡で近所の道を覗くのが日々のルーティーン。そんな彼女は、毎日通る青年に恋をしてしまう。友人の広子に相談するのも、なかなかことは上手く運ばない。だが、ひょんなことから、美鳥と広子は15分前にだけタイムスリップすることが出来ることを発見するのだが…

この映画の魅力は、一つ一つのディティールが、とても「せこい」所にあると思う。タイムスリップ出来るのは、15分前に戻れるだけ。着ている服は、そこいらにあるようなジャージ。タイムスリップで大儲けしようとして、せいぜい競馬で儲けるくらい。そうした「せこさ」と「小賢しさ」に、とてもリアリティがある。それでいて、コメディならではの世界観がしっかりあって、これは多分塩出監督の個性なのだろう。
ただ、台詞や芝居の付け方という空気感はとても「映画」なのだ。例えば、冒頭の方で広子が青年の部屋に行った時、こんなことを言う「あたし実はバンドやっていたんです」「え?ドラム?」こう言葉に書くと詰まらないが、これが広子のちょっと小太りな姿の見た目で、思わず「ドラム?」と答えてしまった青年のうっかりさを的確に表現している。画が語っていなければ、この台詞と芝居の間が生きて来ないのだ。こういうところが正しく映画なのだと思う。そんなところがこの映画には沢山あって、只ならぬ実力を感じさせる。
でもそんなことをお首にも出さない塩出監督の、すっとぼけた演出は実はとても深いこともさりげなく語っている。そのさりげなさが、とても愛すべき所だとも思う。
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