地味な話なのにカミンスキーのカメラが宇宙戦争並みに動きまくる奇妙な映画。
題材にふさわしい厚みも重さもある脚本が、テンポの良さと躍動的な撮影によって社会派らしからぬ軽快さで進んで行く。
「合衆国VS報道の自由」という対立が先鋭化しそうな肝の部分も、ニクソンという分かりやすい悪役を配置する事で、活劇として収まりの良いところに着地する。
「大統領の陰謀」に繋げるエピローグなんて、ほとんどマーベル映画だ。
この「軽さ」は好みが分かれるところだと思うけど、しっかりと押さえるところは押さえている。
ライバルである他紙からの連帯表明とか、判事による「報道」の定義など、明解で簡潔で清々しく、ジャーナリズムという概念の無い国の住人からしたら何もかもキラキラ輝いていて眩しいばかり。
この映画を観た者の態度として完全に間違っているけど、正直「羨ましい」。
更に女性映画としての側面も、メリル・ストリープの緻密な表現で深い奥行きを持ち、そこがまたグッと来ます。