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冬の旅のEyesworthのレビュー・感想・評価

冬の旅(1985年製作の映画)
4.7
【自由の代償】

アニエス・ヴァルダ監督が一人の浮浪女性が旅先で死ぬまでをドキュメンタリータッチで描いたロードムービー。

〈あらすじ〉
少女がひとり、行き倒れて寒さで死んだ。誰に知られる事もなく、共同墓地に葬られた少女モナ。彼女が誰であったのか、それは彼女が死ぬ前の数週間に彼女と出会った人々の証言を聞くほかなかった。そして映画は、バイクの青年たち、ガソリン・スタンドの主人、さすらいの青年ダヴィッド、山にこもって山羊を飼う元学生運動のリーダー、など様々な人々の証言をもとに、彼女の軌跡を辿ってゆく......。

〈所感〉
題材的に最近見た『ノマドランド』を連想した。孤独だがそれぞれが自立している大人のためなんとか寄り添ってそれなりに幸せに暮らしているように見えたが、本作の主人公の若いモナは絶望的なまでに孤独と自由に耐えている印象だった。そこに幸せがあるようには全く思えず、普通に働いて普通に暮らしたほうが絶対良いだろうと彼女の周りの人間のように諭したくなるが、モナにとってはその普通こそが苦痛であり、足枷でしかなかったのだろう。「楽して生きていたい」というがそのライフスタイルは決して楽ではないことも彼女はわかっていただろう。それでもそうするしかなかったので本望か。何も恨める筈もない。『落穂拾い』同様にドキュメンタリー作家ヴァルダ独自の視点と手腕が発揮されており、とても悲しくも味わい深いジャーニーロマンであるように感じた。
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