SANKOU

テオレマのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

テオレマ(1968年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

とにかく状況の説明が一切なく、登場人物の行動も良く分からないのでかなり難解な作品だ。
まずおそらく裕福であろう家庭の様子が描かれる。
工場主でもある一家の大黒柱パオロ、美しい妻とルチアに、娘の死オデッタ、息子のピエトロ、そして使用人のエミリア。
そんな彼らのもとに「明日着く」と記された一通の電報が届く。
そして場面が変わると、一家のパーティーに端正な顔立ちの青年が混ざっていた。
この青年が何者なのかは一切触れられない。
そして家族も何故か彼の素性には触れず、当たり前のように彼を受け入れる。
が、少しずつこの謎の訪問者によって一家は混乱させられていく。
青年の姿に欲情したエミリアは、突然ガスホースを口にし自殺を図ろうとしてしまう。
ルチアもまた青年に欲情し、野外で全裸になる。
青年に惑わされるのはピエトロもオデッタも同じだ。
そしてパオロは青年を前にして懺悔の言葉を口にする。
突然現れた訪問者はまた唐突に彼らの前から去っていく。
残された一家は喪失感から少しずつ崩壊の道を辿る。
オデッタは青年を想い続け、拳を握りしめたまま硬直してしまう。
ピエトロは取り憑かれたようにキャンパスに抽象画を描き続ける。
ルチアは手当たり次第に男を漁り、自らの身体を汚していく。
使用人のエミリアは草だけを食べ始め、やがて様々な奇跡を起こすようになる。
一番身分の低い彼女が聖者として崇められるようになるのも何かの皮肉だろうか。
しかし彼女は涙と共に自らを土に埋めてしまう。
取り残されたパオロは労働者にすべてを譲り、駅のホームで全裸になり、最後は叫びながら荒野を彷徨う。
ブルジョワの崩壊というのはひとつのこの映画のテーマなのだろうが、色々と暗喩が込められていて、謎の訪問者の正体など悩まされる部分が多かった。
登場人物の行動の意味は不明だが、何か画面に惹きつけられる不思議な魅力を持った作品でもある。
ルチア役のシルヴァーナ・マンガーノはやはり美しい。
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