とり

ブラナー・シアター・ライブ2016 「エンターテイナー」のとりのレビュー・感想・評価

3.0
一つの家族、老若男女様々な個がそれぞれの怒りや不満を抱いて、時代に流されていく様が劇的ではなく夢もない等身大なリアルで描かれる。BTLエンターテイナー。
経済成長の全盛期を生きた人間が、お前たちは可哀想だと年若い人間を憐れみ。
変わるべきだと知っているが上手く変われずにいる若者は苛立ち、大人を馬鹿にする。
今も良く見る光景だ。
ブラナーが演じたのは流行が映画に移り舞台演芸が必要とされなくなった時代に、借金を重ね上演する自分の舞台が当たることを夢見ているエンターテイナー。
彼に奇跡は起こらず追い詰められ酒を飲み、娘と年の近い女と新しい生活に逃れようとして結局逃れられない。
70年近く前の脚本だが、当時の人間が感じていた鬱積した怒りや未来に光が感じられ無い不安。 世の中の動きが自分を置いていくような感覚は今も馴染み深い。 どの登場人物も自分の台詞になると演者の口上が如くつらつらと、分かってもらえていないという思いを滲ませ力一杯ぶちまける。

演出も演技も最高で素敵な舞台だったが、見終わった後疲れていた。

印象深い幕開けのシーンが綺麗に終幕にリフレインする等好きな演出も多い。間に挟まるブラナーのエンターテイナーとしての劇中劇的なパフォーマンスも絶妙だ。ギリギリで笑えず研鑽しているいうのだろうが絶賛するほどではないという演技が完璧なのだ。一流が二流を演じ切る力加減が凄い。

自分の職(や考え)に執着し、身勝手で無責任な逃避を企てながら惨めさは自分が一番分かっており、開き直って居直るのは自尊心が傷つくのを恐れての行動。
私が何よりも打ちのめされたのは、エンターテイナーの姿に嫌悪と愛しさと哀しさを以って言うが話の内容が今の私には身近過ぎた。
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