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波紋のkazataのレビュー・感想・評価

波紋(2015年製作の映画)
5.0
だいぶ前に輸入DVDで見ていたんですが、Filmarksに載ってるのを見つけたので見返してレビュー。
(DVD特典の短編もなかなか良きなんで北欧映画好きな人にオススメ!)


元カノを殺しちゃった主人公少年が2年の刑期を終えて出てくるところから始まる物語。

いくらなんでも元いた学校に復帰するなんて人権意識の高いスウェーデンでも無茶でしょ…って思ったら案の定な感じで展開していき、やがて暴発しちゃうわけで。その結果のあまりの痛々しさに胸が苦しくなる……ため息が出るほど見事で秀逸な一作です。

("人殺しに人権なんていらない"と簡単に言えちゃう人にこそ見て欲しいんだけども、その思想の行き着く先は殺人者と同じく"暴力の肯定"や"暴力の連鎖"になっちゃうというメッセージが……伝わらないんだろうな)

まず主人公少年の生い立ちについて、マッチョ的な思想(強権支配型)の強い男だけ家庭に育っていて、愛されてる感が薄いために他人に過度な愛情を求めてしまうキャラクターになってしまったということで、若干同情できる余地あり。
(それ故にフラれた直後に主人公の友達と寝ちゃった元カノを衝動的に殺しちゃう…)

(しかも父親を責められないのは、彼もまたそういう環境下で育ってきたわけで…と言うのも、主人公の祖父は、病気で死にそうな飼い犬を銃殺しちゃうような奴だから←これだと死期が迫っている祖父自身も銃殺されてOKって孫に思われちゃうよね…)

で、本作が優れているのは、主人公の心の支え的なキャラとして"壊れたバイクを直す"同じ学校の女の子が出てくること。
(バイクをいじれる女子憧れってあるよね…)
(主人公の弟くんの「彼女も殺すの?」って台詞がナイス!)

でも、主人公は"直したい"と思ってもやり方がわからずに"壊すこと"しかできなくて…それが切なくて……



(以下、ラストについてのネタバレ匂わせます…)



「殺人者を社会は受け入れますか?」という究極の問いかけがなされる本作で、最終的に主人公はそれを被害者遺族に委ねます。それが被害者と加害者の苦しさがビンビンに伝わってくる素晴らしいクライマックスシーンになっていて……

そしてそこで描かれる、(我が心の師である)ダルデンヌ兄弟の『息子のまなざし』的な微かだけども確かな希望よ!
…それこそを僕は信じたいって強く思いました!!
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