『ウォレスとグルミット』『ひつじのショーン』で好評を博したアニメーターのニック・パークが、新たに放つストップモーション・アニメ。
あらすじを見ただけで「そんなアホな」と言いたくなる荒唐無稽なストーリーが特徴で、映画開始と同時にとにかくハチャメチャな展開のまま突っ走る。アードマン・スタジオのどんな時もユーモアを忘れない精神は今回も健在で、いつの間にか考えることを忘れて没頭させる楽しさに満ちている。
そして何より凄まじいのは、ストップモーション・アニメの完成度だろう。本作の原案は2010年に始まっているので、公開まで足掛け8年も要した。ミニチュアたちが動き出すと生き生きとした生命力がほとばしり、粘土で作られたことを忘れそうなくらいだ。どうやったらこんな風に撮影ができるのか予想もつかないし、作り手の熱意と献身には尊敬の念が込み上げる。
問題なのは、この凄さがなかなか見ている側に伝わりづらいことだろう。特に最近は単純なアニメーションの出来栄えだけではなく、ストーリーもプロットも実写顔負けの作品で溢れかえっているため、本作の脚本の弱さは痛すぎる。チームとしての強さと個の強さ、青銅文明と石器文明の対比をうまく落とし込めていない点は非常にもったいない。
しかし資金力も知名度もケタ違いのスタジオ作品ばかりが世に出ていては、ストップモーション・アニメというジャンルそのものの地位が危ぶまれてしまうため、本作が世に出たことは素直に賞賛すべきだと感じた。
⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:80%
・観客支持率 :50%
「アードマン・スタジオの最高傑作と並ぶほどの仕上がりではないが、アニメーション好きを虜にしたユニークなビジュアル・愉快なユーモアは健在である。」