KnightsofOdessa

フランコフォニア ルーヴルの記憶のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

3.0
[戦争に負けた今、ルーヴルとはなんだ?]

美術館ものということで、思い出すのは『エルミタージュ幻想』だが、本作品は物質としてのルーヴル美術館よりは歴史や概念としてのルーヴル美術館に主眼を置いている。要塞だった時代から宮殿を経てナポレオン時代から二つの世界大戦へと至る歴史を、ソクーロフが語っていく。要所要所でナポレオンやフランスの象徴マリアンヌ、二次大戦期の館長ジョジャールとナチ将校ヴォルフ=メッテルニヒが登場するので、完全に違うというわけでもないが、雑にまとめると省エネ版『エルミタージュ幻想』といったところか。机の上で作れそうな歴史プレゼンと、現代の風景に映り込む歴史上の人物と、二次大戦期の完全セット完全コスプレという規模感の違いが不思議と心地よい。しかし本作品と『エルミタージュ幻想』の温度差…と思っていたら、ナチスはフランスを姉妹としたが東欧ロシアは徹底的に叩き潰そうとしたというセリフで納得。戦時中のエルミタージュは野戦病院として怪我人と死人でごった返してたいたらしい。いやあソクーロフはまだまだ苦手です。ベロッキでいう『乳母』みたいにスッと見方を理解できるような作品に出会えることを期待。
KnightsofOdessa

KnightsofOdessa