mofa

グローリーデイのmofaのレビュー・感想・評価

グローリーデイ(2016年製作の映画)
4.2
【青春の危うさ】

リュ・ジュンヨル様の作品、
一応、こちらでコンプリートです。
こちらの作品は、
かなり「胸糞悪い」系とか、
「鬱映画」と聞いていたので、
観るのを躊躇してて。
しかも、評価もすっごく悪い。
私の観れる所では配信されてなかったので、
あえて、レンタルしたりDVD購入してまで
観ようと思わなかったんですね。
 そしたら、最近、
アマプラに配信されている事を知り、
知った時には、
「近いうちに配信終了予定」のフラグが
立っていたんですね~。

 という事で、
けっこう覚悟して観てみました。
世間の評価は、非常に低いのですが、
私は、☆4.2高評価となりました。
 内容はどうであれ、この作品は
非常に素晴らしく仕上がっているんです。
確かに、ここまで胸糞悪い展開を描いて、
一体、何を伝えたかったのか。
 一歩間違えると、
嫌悪感を与えて終わる作品かも知れません。
明確な答えはないけれど、観た人自身が、
落としどころを模索する。
その意図を探ろうとする。
そういった作業の過程の中に、
それぞれの答えと出会える・・・・
そんな秀作だと思っています。

 しかし、それ以上に、
この作品の素晴らしい所というのが、
まさに、93分という割と短い時間の中で、
キャラクターの存在感はもちろんのこと、
更に短い時間の中で、
キャラクターそれぞれが置かれた環境を、
きちんと描いている・・という事に、
驚くしかなかったんですよね。
 最終的に、それぞれが選択する流れに
違和感を持たないのは、
もう、ひとえに、その凄さだと思うんです。
 これは、役者もいいけど、
演出が抜群にいいんだと思う。
 すべてのキャラクターが、
短い時間の中で、
その事情をしっかりと描き出しているから、
ただの胸糞悪い展開だけではなく、
リアルさを纏ってるんですよね。
 その怖さ、恐怖。
 若さゆえの美しさ、
爽やかさだけではなく、
若さ故の浅はかさ、そして、弱さ。
 それらは、確実に表裏一体で、
どちらにも倒れ込む可能性を秘めている。
青春は、そういう危うい所に
立っているのかも知れない。


☆以下、ネタバレです☆
青春の光と、影を描いていて、
その過程に、違和感が一切ないんですね。
 ひつこいようだけど、 
ほんと短い時間の中で、
彼らがサンウに罪をなすりつけよう・・・
ってなるのが、無理がないんですよね。
 家族との関係性や、
警察で増長していく恐怖が、
彼らを追い詰めていくんですよね。

他のレビューを拝読すると、
そういう選択をした子供たちが、
「クソだ」という意見を散見したんですが。
私は、もう、そういう選択を
してしまった子供たちを、
誰が責める事が出来ようか・・・
と思って、泣けたんですよね。
 だって、この4人、無実なんですよ。
無実を訴えて、訴えて・・・・
でも、大人たちに裏切られて・・・
冤罪になって。
 家族からも追い詰められていくんです。
この4人の中でも、
サンウと仲良しだったヨンビが最終的に、
他の2人に同調する所が
1番難しかったと思うんですけど。
 お兄さんが出て来てね、
お父さんは刑務所に入ってると。
 彼は、そうなりたくないんですよね。
 刑務所に入るという事は、
大嫌いな父親と同じになってしまう。
そこに罪があるかどうかは、
関係ないんですよね。
 追い詰められて、彼は、幻を見る。
優しい笑顔で、自分を見降ろすサンウ。
 彼は、自分の都合の良いように、
サンウもきっと許してくれる・・・・
そう判断して、「サンウ」という名前を
あげてしまうんですよね。
 私がサンウなら、
みんなを許してあげたい。
3人とも、十字架を背負って
生きていく事になるんですよね。
 彼らは、彼らが見た大人のように 
なってしまうのかも知れないなぁ。
 
そうなった原因は、「大人たち」だ。
とことん、理不尽な展開だ。
 これからの青年たち4人の人生が
かかっているのに、
夜食のメニュー選びで必死だ。
 助けてくれた子供たちを、
自分の保身のために、
犯人と決定づけた。
 「クソ」と呼ぶべきなのは、
まさしく、「大人」なのだ。
とにかくこの事件を
終わらせたい警官たちは、
子供たちが「サンウが主犯」という
供述の翻しも、どうでも良かった。
 早く、事件が終わればそれでいい。
 そういう大人の事情の流れも、
しっかり描いているから、
その辺りの違和感もない。

こういった胸糞悪い作品は、
そういった展開を強調し過ぎて、
先走ってしまう事が多い。
そんな中で、
この作品は、そうなっていく展開の
背景が、きちんと描かれていると思う。
 だからこそ、青春の光と影の存在を、
よりリアルに感じる事が出来る。

若さゆえの輝きや、無敵感。
けれど、その落とし穴にも、
充分に注意するべきだと思う。
ヨンビが「人助けをして、
褒められたかった」
という言葉通り、
そういった気持ちが、彼を、
トラブルへと突き進ませたかも知れない。
 若さゆえ、
トラブルに巻き込まれる事もある。
それらは、理不尽な結果を
招くかも知れない。

若い子は、この作品を観て、
若さに浮かれながらも
「地に足をつける」事を学ぶだろう。
 
そして、親世代が観れば、
我が子に、「地に足をつけてね・・・・」
と注意するだろう

哀しい事に世の中、理不尽な事はある。
青春だとか若さだとかと浮かれていたら、
どえらい目にあう・・・
そんな青春へのアンチテーゼを、
リアルな演技と演出で描いた、秀作だ。
(世間の評価は低いけど・笑)

・・・私が1番好きな韓国映画
「コンフェッション友の告白」と
似てる感じですね。

みなさん、素晴らしい演技でしたが、
ジュンヨル様さすがでした!
mofa

mofa