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太陽のめざめのemilyのレビュー・感想・評価

太陽のめざめ(2015年製作の映画)
3.6
6歳のマロニーは母親に置き去りにされ、家庭裁判所の判事フローランスが保護する。10年後相変わらず非行を繰り返してるマロニーに判事は同じような境遇で大人になり更生した教育係ヤンを紹介する。大人たちと彼女にささえられやがて大事なものに気がついて行く。

繊細な心情と葛藤を暴力的な行為や暴言の数々と目の奥に常にある怒りで表現し、時には愛に飢えた猫のような潤んだ目を見せるマロニー、演じるのはロッド・パラド。非行を繰り返しつつも彼を見捨てないのは、人間としての優しさや愛を求める彷徨い自らはその愛を与えようともがいてる根本が少年から漂ってるからだ。

余りにも子供過ぎる母親は常に感情をあらわに悲劇のヒロインを演じる。マロニーはそれでも全身全霊で母をそうして弟を愛し、無心の愛を注ごうとしてるが、やり方がわからない。

判事は常に冷静沈着で、どっしりとしたカラダと表情で見守るカトリーヌ・ドヌーヴは主役でありながら彼女にとっては受け持った少年の一人であり、沢山のなかのひとりである。教育係のヤンも、またフローランスが受け持った男であり、彼女の前で弱音を吐き涙を見せる。ヤンを演じるのはブノワ・マジメルである。やさぐれ感と、判事の前で見せる弱い自分とのギャップが人間味を与えてくれる。

大人たちの言葉や見守る視線がマロニーに直接影響を与えた訳ではない。それらの積み重ねが、女の子への興味をもたらし、愛を知らずに扱いがわからなかった自分より弱い存在。しかし大事にしたい感情は弟を母を思うものと同じなのだ。

なんども挫折し、なんども非行に走りながら、それでも彼を信じ厳しく、時にはやさしくそこに居るという強みが彼の心を動かし、大切にしたいものができた時、愛を与えることを素直にできるようになる。

信じれるのは育ててくれた人でも、血の繋がりでもない。そうして愛は求める限り永遠に埋まらないことに気がつくのだ。与える愛が幸せを生み、彼から溢れる素直な笑顔がジーンと胸を熱くする。その笑顔は周りで支え見守っていてくれた大人たちの信じる心が導いたのだ。どんな子供も悪魔ではない。信じて待ち続けることが本当の愛情だと思う。
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