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海よりもまだ深くのKKKKのネタバレレビュー・内容・結末

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

偶然にも台風の日にAmazon Primeで鑑賞。

名言連発、でそれだけ追っていっても十分メッセージ性のある映画と思いました。

ハナレグミのエンディングテーマもメッセージが一貫していて、
ラストは切なくなりました。

言い訳を虚勢ばっかりの主人公が、ちょこっとだけ前向きになる。

高校生に「あんたみたいな大人にだけは絶対になりたくない。」
と言われた時の、阿部寛の返し
「簡単になりたい大人になれると思ったら大間違いだ」
今はかつて自分が思い描いていた理想の大人とは違う。
そんなことを思いながらこの発言につながっている。

競輪でせっかく得た資金をスってしまう。
その時にかけていた選手に向かって投げかける罵声。
「勝負しろよ勝負をよー!」
現状、何に対しても勝負をかけていない男が、投げる罵声が切ない。

過去の恋愛に関しての見解の違いもおもしろい。
興信所のアシスタント女性
「過去の恋愛は、油絵。データのように上書きするわけではなく、
上塗りするから見えなくなっているだけ。ここにはあるんですよ。」

興信所所長(リリーフランキー)
「誰かの過去になる勇気を持つのも大人の男」

団地内の音楽の先生が、番組を断ったという(おそらく嘘か虚勢か)話をしている時も
「そういうのは、音楽の神様に怒られそうで断っちゃんですよ。」
横顔も印象的なシーンで、
そいういう風にほんとはなりたかったけど、今は団地の老人相手に
趣味の音楽のレコードを聞かせて先生ごっこをしている。

台風の日の深夜、公園のタコ滑り台に
親子で行くシーン。
これまでパパと一緒にいても全然楽しくなさそうだった息子が
この時だけは楽しそうに、パパに付いていき、タコ滑り台のなかで語る。
息子に問いかける「何になりたい?」
息子は「公務員になりたい。」と、阿部寛の子供時代と同じ回答をする。

逆に、息子からパパに、
「パパは何になりたかったの?なりたいものになれた?」
に対し、
「まだ、なれてない。」
と、初めて弱みというか本音を話すところは、
なぜだか泣けた。

母の真木よう子も加わり、阿部寛と2人きりになったところの会話も
切ない。

「こんなはずじゃなかった。」
「ホントにこんなはずじゃなかった。」
「前に進もうとしてるんだから、邪魔しないでね。」
と、今までケンケンしていたトーンとは売ってかわって、
穏やかなトーンで話す。

「分かった。」
「分かってた。」
と、言い直す阿部寛。

そのやりとり、表情がとにかく切ない。

フラッシュバックしたシーンは、
新彼氏と食事中に、阿部寛のかつて賞をとった小説に関しての話になる。
読んでくれたこと自体が嬉しく、感想を聞く真木よう子。
「時間の無駄とは言わないが、、、」との感想に、
笑顔を崩さないように落胆する真木よう子。
元旦那に対する、微妙な感情がその場面に出ていたように思い、
タコ滑り台のシーンで思い出した。

ラストの駅で見送るシーン。
お互い、自分の生活に戻っていき、雑踏にまみれていく。

ハナレグミのエンディングテーマが流れる。
歌い出しは、
「夢見た未来はどんなだっけな?」
泣かなかった、感情的には切なくて号泣でした。

面白い。というか感情の揺れる映画でした。
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