もめん豆腐

海よりもまだ深くのもめん豆腐のレビュー・感想・評価

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
4.1
前にも観たけど是枝監督のあたたかな眼差しと市政の人々の何気ない日常が観たくなって再視聴。樹木希林さんと阿部ちゃんのやり取りは本当の親子なのかってくらい自然で演技だと思えない。こちらが勝手によそのお宅に入り込んで会話を盗み聞きしているような感覚に陥る。親子だからこその容赦ない言葉がビシバシと飛び交うものの、この親子には棘がないな。でもお姉さんとはマリアナ海溝並みの深い溝があるね。そこは男と女で差別されて育ったんだろうね、お姉さん。それにしても阿部ちゃんはダメなのにかわいらしさ溢れる人をやらせたらトップ10に入る役者になったな〜。前妻をつけ回すって悪趣味にも程があるのに自然なの何。加えて作家として活躍したい願望がある割には、会話のあちこちに「あれ」が入るのは致命的よ。作家が、言葉が出てこなくなったらお終いでござんす。母子で、あれよあれって言い合ってる分にはいいけどさ。あ、どうでもいいけど、阿部ちゃんが希林さんに「そのCDラジオもっと良いのにしろよ」みたいなこと言ってたあれ(笑)はあてくしも持ってる。いいのよ、これ、お風呂にも持って行けるのって希林さんと同じこと言ってた。しかも扇風機もYAMAZENの同じの使ってる。あー貧乏人のシンパシー感じるわ〜。
なぜ『海よりもまだ深く』のタイトルがついたのか前回観た際は全く気づかなかったけど、今回はもう少ししっかり観た。台風の日に母親の家に泊まって母子でおしゃべりしてる時にかかってた曲がテレサテンの「別れの予感」で、歌詞の

海よりもまだ深く
空よりもまだ青く

から取ってるんだとやっと気づけた。
変なこと書いちゃうけど、この「別れの予感」が流行ったのはあてくしが高一の頃で、Rock少女だった(今はRockおばさん)から、とにかくたくさんの音楽を浴びたくていっぱいダビング(!)しまくり、音質もラジカセ(!)では物足りなくなり、どうしてもコンポでCDもレコードも聴きたくてバイト禁止の高校&親も反対なのをガン無視してほか弁屋でバイトを始めた。そこでかかってた有線でこの曲の存在を知ったのだけど、当時洋楽Rockに心酔していたのにこの曲だけは琴線に触れ、かかる度に胸が締め付けられたのをしっかり覚えている。そして今聴いてもジーンとする。メロディーも素晴らしいし、出だしの歌詞も16歳の女の子には刺さりまくった。

泣き出してしまいそう 痛いほど好きだから
どこへも行かないで 息を止めてそばにいて
身体からこの心 取り出してくれるなら
あなたに見せたいの この胸のときめきを想いを

作詞家荒木とよひささん、あなたは天才ですか?歌い出しの
泣き出してしまいそう で、いつも泣き出しそうだった。

閑話休題。
台風真っ只中、タコの中で父と子が語り合うその記憶はお互いにとって一生の宝物になるはず。高価な時計でもなく誕生日の特別なお祝いでもなく莫大な遺産でもなく、あたたかくてちょっぴり切なくて忘れたくない日常の記憶じゃないかな。このお父さんはかなりポンコツだけどポンコツなりに二人のことを愛しているのはわかる。
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