KengoTerazono

吸血鬼のKengoTerazonoのレビュー・感想・評価

吸血鬼(1956年製作の映画)
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大味でおもしろかった。シネスコの豪華な感じもよかった。

フェイントが上手い。映画が始まって第2の犠牲者となる踊り子の女性が襲われる際、窓にドリーインして窓が勢いよく開いたと思ったらただ勢いよく開いたに過ぎず、男の影が伸び、鏡の前に細い色白の男が立っている。そして鏡越しに目が合い、逃げようとするも襲われる。女学生が屋敷の中に案内され、不気味な部屋に通される。扉が開いたかとおもうと猫が入ってきて、彼女は猫と戯れる。彼女が立つ動きと同時にキャメラもティルトアップすると、男がいつのまにか立っていて、彼女の口を押さえる。

俯瞰からのクローズアップやキャメラの前進・後退運動。キャメラの動きがはっきりと浮かび上がることで、何かが忍び寄る感じがして不気味。良かった。

1番度肝を抜かれたのは、女が老いる姿がシームレスであった点。一度カットバックを挟むことで、美しかった女性が一気に老け込んだことに対する衝撃が伝わり、その後徐々に老いていく様子がひとつのショットに収められることで、恐怖へと変わる。この2段重ねがとても効いていた。若返りもそれと同様である。

セットがいちいち大袈裟な感じもいい。

若返りのプロセスの際の喘ぎや、女性を襲う加虐性にフェティシズムを感じた。
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