KnightsofOdessa

ファイアーズ・ワー・スターティッド(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

3.0
No.167[それでも彼らはイタチを追い続けなければならない] 60点

1943年のイギリス映画なんて言われれば全身全霊を込めたプロパガンダ映画を想像するが、そこがやはり斜に構えたイギリス人、プロパガンダを直接的に感じさせない(事実ドイツのドの字も出てこない)消防士の活躍をド直球で描いた力作となっている。といっても、当時のイギリス人からは冷遇されたらしいと聞くと笑える。結局彼らも人間だった。

舞台は1940年冬~1941年春に掛けてイギリス大空襲(ザ・ブリッツ)期のロンドン。毎夜戦闘機が爆弾を落としていく中、燃えた家屋を消火するために男たちは夜の街に繰り出し、女たちは現場と司令室を電話で繋ぐ。前半は点検や新人の持ち回り場所確認、本部による出動可能な車両やホースなどの確認作業が淡々と映し出され、後半は波止場での消火作業を映している。消火シーンは正直長くて飽きてしまうが、夜が明けたロンドンの街を大量のホースが通っているシーンは脳裏に焼き付いて離れない。

爆撃で発生した火災を消火しても次から次へ燃やされるのだが、誰かが止めないとロンドン中が燃えてしまう。これぞ完全なるイタチごっこ。諦念にも似た感情が彼らを支配する中、彼らは次の日も消火へ向かうのだ。燃えてしまった事実ではなく、消し止めた事実を得るために。
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