タイラダでん

ゴジラvsコングのタイラダでんのネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラvsコング(2021年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

まずは、これほどの『怪獣活劇』(『映画』にあらず)を送り出してくれたことに、最大のリスペクトを捧げたい。とにかくゴジラが、コングが、そして 

メ カ ゴ ジ ラ が

画面狭しと大暴れ(メカゴジラに関しては「出てくるかもしれない」程度の認識だったので、本当に出てきて驚いた。心の中の外人四コマが叫んだのがわかった)。

怪獣バトルは100点満点で5億点。ゴジラは過去2作以上に放射能熱線を大盤振る舞いしていたし、噛みつきやひっかきを駆使した野性味あふれるバトルスタイルは、「挑戦を受ける王の立場でありながら、なりふりかまわず勝ちにいく」という姿勢を感じさせて非常によろしい。そして今作の主人公は明らかにコングのほうなので、ゴジラは「前作の主人公が最大の壁となって新主人公の前に立ちふさがる」という全オタク大好きな存在と化しており、そういうものからしか取れない栄養をたっぷり摂取することができたのであった。

コングのバトルスタイルもたまらない。海上の初戦で見せた渾身の右ストレート(予告編で何度も見たはずなのに、やはり心の外人四コマが叫びだしていた)! 軍艦八艘飛び、戦闘機手裏剣、水中格闘あたりは絵的にも派手派手で手に汗握るものだ。さらに2回戦、夜の香港を縦横無尽に飛び回り、手にしたゴジラ斧で放射能熱線を受け止め斬りかかる! ここの立体的(まさにゴリラ的な)バトルは、気ぐるみ特撮では絶対に叶わなかったものだ。技術の進化の勝利、このまま永遠にこの戦いだけ見ていたい……などと思いながら見てしまっていた(無論、気ぐるみ特撮を貶めるつもりは一切ない。そうであれば、こんなに長く怪獣映画ファンなどやっていない)。

さらにメカゴジラ! 前作で回収されたギドラの骨を利用しての遠隔操作(結果暴走してしまう)! ドリル攻撃! 背中のブースターで高速機動、ゴジラの攻撃をスライド移動で交わし一瞬で背後に回り込む! 加速を載せた攻撃をゴジラに叩き込む! おまえ3式機龍じゃん! なんでアブソリュートゼロ撃たないの?! それはともかく、高機動メカゴジラの動きは明らかにアーマードコアのそれだったので、映画を見た全員の体が闘争を求めてしまい、結果アーマードコアの新作が発売されるに違いないなどと思いながら見ていた。唯一残念なのはデザイン。「レディ・プレイヤー1」タイプのメカゴジラ、正直あまりかっこいいとは思えなかった(動いたら別)。

そしてクライマックス。暴走するメカゴジラを打ち倒すため、宿命のライバル同士であるゴジラとコングが手を組む! ゴジラの熱線を受けて青く輝く斧(とらの雷撃をうける獣の槍かと思った)でメカゴジラをなます切り! とどめとばかりに首をもぎとり、高らかに吠えるコング(コングウィンズ、フェイタリティー)! 心の中の外人四コマは叫びっぱなしであった。

とにかく、尺の半分を怪獣同士のド迫力バトルに費やすという潔い構成で、「お前たちの見たいものを存分に見せてやるぜ」という制作陣の姿勢に大層好感の持てる作品だった。そんな作品が興行収入でも成功を収めているということは、全世界に「カイジュウ同士のガチンコバトルがみーたーいー」と考えている層が思った以上に多いことを示しているのだろう。そう、カイジュウバトルはきちんとカネになるのだ。さあ、出番ですよ東宝さん。今こそ、本家本元、本場のトクサツというものをお出しするタイミングだと思うんですよねえ。というわけではやくして。やくめでしょ。

反面、ドラマパートは本当にひどい。本当に、心からひどい。前作KOMもたいがいだったが、それに輪をかけて突っ込みどころしかなく、擁護のしようがない。アホと狂人しかいない。前作で唯一まともだった娘ちゃんが陰謀論ドハマリ女になっていたのを見せられたときには、新種の拷問かと思った。しかしそれも仕方がない。ドラマパートはあくまでも、怪獣同士の大バトルのお膳立てを整えるためのものでしかないのだから。そこに整合性や重厚さを求めても仕方がないのだ。

そもそも、ゴジラ映画でどれだけ人間パートに力を入れたとて、どうせ訳知り顔のオタクに「初代ゴジラの重厚さにはかなわないよ」などと言われるだけなのだ。だったらそこは切り捨てた上で、バトル演出に力を割いたほうが良いに決まっている。

というわけで、発表から公開まで長く待たされたものの、その甲斐のある映画だった。ギャレス版ゴジラにおける「怪獣パートの短さ」、ゴジラKOMにおける「取っ組み合いの少なさ」、それら個人的に感じていた物足りなさを完全に解消してくれた今作に、最大限の賛辞を。

それにしても。

先週は「モータルコンバット」、今週は「ゴジラvsコング」と、高栄養かつ高カロリーな作品を続けて見ることができたので、寿命が130年は伸びた気がする。面白い映画は本当に健康に良いものだ。いずれガンにも効くだろう。