タイラダでん

君たちはどう生きるかのタイラダでんのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

まず、なぜこのタイトルなのかと小一時間(略)
内容はジブリの合わせ出汁みたいな感じで、ジブリのこの雰囲気が好きならば一定の評価を与えることができるでしょう。
問題は、一般的な映画として見た場合、とにかく粗が多すぎること。主人公の眞人くんが異世界に行くために尺の三分の一を使うのは令和のエンタメの時間感覚ではない。展開が行き当たりばったりで説得力がない。いや、宮崎駿の中では整合性がとれているのかもしれないが、少なくとも観客にそれが伝わっているとは思えない。豪華俳優オールスターキャストの声優陣は案の定「自然な演技」の演技で、だから感情を曝け出すシーンが逆に不自然に聞こえてしまう……。
キリがないのでこの辺りで止めておきますが、コレが引退撤回してまで作りたかった作品なんスか?と聞きたくなってしまいます。
でもですなあ……なんか嫌いになれないんですよねえ……多分、この作品が巨匠・宮崎駿にとって「自分の後継者がいない」という最大の無念を原動力に作られた、情念の塊とでもいうものだからなのだろうと思います。
実の息子には残念ながら意欲も才能もなく、最大の弟子は自作で主演まで与えたにもかかわらず自分とは違う方向に進みつつある……異世界で待つ大叔父さまはあからさまに宮崎監督の写し身で、彼が眞人君に世界(スタジオジブリという帝国)を受け渡そうとして拒絶されるところなどはもうそのもので。
そのうえで(嘘つきの)アオサギ男に「思い出はいつか消える、さらば友よ」なんて言わせたりして。

この映画は、摩滅寸前である巨匠の、生々しい魂の叫びだと思います。いくら粗が目立とうとも嫌えるわけがない。