MasaichiYaguchi

シアター・プノンペンのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

シアター・プノンペン(2014年製作の映画)
3.6
第27回東京国際映画祭「アジアの未来」部門で国際交流基金アジアセンター特別賞を受賞した本作は、ポル・ポト時代に蹂躙されたカンボジアの映画界を回顧し、追悼している。
カンボジアの首都プノンペンに暮らす女子大生のソポンは、軍の大佐である父親の絶対的な家長権の下、結婚まで勝手に決められてしまうことへの反発もあって気儘な学生生活を送っている。
遊び仲間とたむろする廃業した古い映画館で、1970年代のポル・ポト政権下で作られた映画と出会い、その映画の主演女優について知ったことで、その作品に深く関わっていく。
彼女が出会った映画には結末となる部分が欠落していて、彼女は主演女優だった或る人物の為に該当するフィルムを見付けようとする。
ところが、それがカンボジア内戦で失われていることが分かり、彼女は失われた部分を再現しようと或る行動を起こしていく。
本作の山場というか、描きたかった部分は後半に登場する。
写真や映像、様々な記録やルポルタージュで明らかにされているポル・ポト政権による大量虐殺。
この政権下のクメール・ルージュによる大虐殺の対象は富裕層、医師、学者、芸術家、教師、技術者等の各種専門家及び知識人、その中には映画監督や俳優たちも含まれている。
その拭えない黒歴史が作品のバックボーンになっている。
映画は過去の闇と向き合い、それを乗り越えて未来に進もうとする。
ラストでヒロインが発した言葉は、カンボジアの映画界を含めた人々の決意のように感じた。