JunIwaoka

フル・コンタクトのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

フル・コンタクト(2015年製作の映画)
4.2
2015.10.25 @ 28th TIFF

帰り道にタイトルのフル・コンタクトが意味することを何度も何度も考えた。
ドローンを遠隔操作し、異国の地で暗殺を行うという現代的な戦争映画かと思ったら、PSTDが題材であってまったく違かった。衰弱する精神世界を圧巻の映像美で語り、とても抽象的にも関わらず明確なメッセージが突き刺さる。
ドローンは通信技術によるバーチャル社会の異常性を象徴していて、人としての感情を失ってしまう現代への警鐘。監督が話していたようにPSTD、つまりトラウマを戦争という背景で強調しているけれど、失恋や事故、近しい人との死別など日常的であって、当たり前にあるものが覆ることで自我を見失ってしまう弱さにある。そんなときに自分の殻に閉じこもり心を無にしてしまう気持ちや後悔だや罪悪感が波のように押し寄せる心情は痛いくらい分かるし、僕なら一日中寝ていたい。だけど生きるということはいつまでも逃避していられずに、再び自分以外の別のものに向き合わなければならない苦しみがまたあるんだよね。
コンタクトというのは他者に触れ合うこと。終盤に描かれる二つのコンタクトによって痛みを感じることで他者を受け入れ、温もりを感じて喜びを知る。フルコンタクトとはPSTDを描きながら他者を受け入れ(それってすごい困難なのことなんだよな。。)て、再生する自我、ヒューマニティーへ辿り着く物語。
JunIwaoka

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