JunIwaoka

カランダールの雪のJunIwaokaのレビュー・感想・評価

カランダールの雪(2015年製作の映画)
4.0
2015.10.28 @ 28th TIFF

この映画の最後のシーンで彼が奈落の底から見上げた景色が忘れられない。感動とか容易な言葉で言い表すのが惜しいくらいに圧巻で、辛抱強い139分のすべてはこのために意味がある。
険しい山間部で原始的に暮らす一家に密着し、定職に就かず鉱脈探しに明け暮れる父親によって生活は苦しくなるなかで、家族の絆(といえばいいのかな)を落胆しながらも忍耐強く、そしてそれでも見捨てることない信頼によって鮮烈に描く。いわば広大な自然のなかで描く甲斐性のない男のお話なんだけどね。
互いにいまの生活がよくなることを願う気持ちは変わらないのだけど、夫婦がそれぞれ違うことを思っていて、奥さんは家族を守ること第一に考え、旦那さんは一攫千金で打破することを望む。
カランダールの雪によって立ち行かなくなる旦那さんに対して、いい詰める奥さんは誰よりも苦労しているから非はないんだけどこれはなかなか辛い。「会うたびに文句を言われたら堪らん!俺の気持ちも分かってくれよぅ」とまるでサラリーマンのように嘆く姿が痛々しい。それでもめげずに闘牛へ新たな希望を持つ旦那さんと、その姿を見て思いが重なっていって次第に応援する家族のあり方がとても温かくて、ようやく救いを感じる。しかし博打で生活の基盤を取り戻すことなんて出来るわけがなくて、度重なる不運に翻弄され疲弊する家族の安堵を心から願ったとき、一筋の光が差す瞬間に胸が熱くなって涙が溢れた。
JunIwaoka

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