こまち

ブルーに生まれついてのこまちのレビュー・感想・評価

ブルーに生まれついて(2015年製作の映画)
4.2
トランペット奏者チェット・ベイカーの苦悩と再生。

薬物を断ち切れずに、ある時売人から暴行を受け復帰は危ぶまれてしまう。役者を目指す女性に出会い、彼女に支えられながら復活を目指すなかで、その破滅的な過去と向き合いながらトランペットを吹き続ける。
血を流して痛みに耐えながらも必死でトランペットを握り締める姿はかっこよくもあり、トランペット、ジャズ中毒というか、逆にジャズによって彼は生かされているともいえる。

また、薬物はその人自身だけでなく、周囲の人も自分の大事なものも、関わるもの全てを蝕むことを薬物映画よりも強く感じられた。
自堕落な生活を送っているようにしか見えなくても、こういう人こそ音楽といった表現に注がれるエネルギーが膨大で人の心を動かすものだから難しい…そのエネルギー故、生活や精神のコントロールはなおざりになるのかもしれないけど。

ラストの、メタドンかヘロインか、二者択一で選んだ方が彼が進む道を示す場面に圧倒された。演出も粋だし、チェットの歌声や視線、それを見て感じ取ったジェーンの表情だけで物語られる哀愁がたまらなかった。


よれよれ白タンクトップも、きめたスーツ姿も似合うイーサン・ホーク。演技が輝いてる。
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