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教祖誕生のtakのレビュー・感想・評価

教祖誕生(1993年製作の映画)
3.0
フジテレビの映画番組で、かつてとんでもないタイミングで、直近の事件と似たテーマの映画を放送したことがあった。それは1982年。ホテルニュージャパン火災事件の直後に放送したのが、高層ビルが大火災になるパニック映画「タワーリングインフェルノ」。同じ年、日本航空機が羽田空港沖で墜落した事件の直後には、航空パニック映画「エアポート’75」が放送された。偶然のことだとは思うけども、子供心に「今こんなん観ていいんやろか?」と思ったのを強烈に覚えている。今なら多分番組を差し替えているだろう。東日本大震災の後、津波シーンがある映画が上映中止になったみたいに。

この新興宗教をテーマにした「教祖誕生」が地上波で初放送されたのは1995年。オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件の一ヶ月後だった。えー!?このタイミング!?

ビジネスとしての宗教は「マルサの女2」でも描かれたけれど、ここではかなり悪質。この映画に登場する宗教団体にとって、教祖とは飾りもの。教えが信者に伝わり、それで安心できるなら誰だろうと構わない。団体が金を集めることに懸命になる様と、信者が理想を掲げて真摯に教えを貫こうとする様を皮肉をこめて描いたブラックコメディになっている。

心の平安を求めるために、何かにすがりつきたくなるのが人の常。それは悪いことではないし、何を信じようと拝もうとそれは人それぞれ。それを通じて人は変わっていく。「教祖誕生」の見どころは、この団体に関わることで心も行動も変わっていく主人公の姿。成長物語なのに、同時に怖さも感じる。あの事件が起こる前だから撮ることができた映画かもしれない。
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