マグルの血

レディ・バードのマグルの血のレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
4.5
拗らせた少女が大人になるまでの話。

再鑑賞です。素敵な作品。過去に観たときも面白かったと思ったけど、改めて観てもちゃんと面白いと思えました。よく、「記憶をリセットしてもう一度観たい」とか言うけど、意外と限りなくそれに近い状況を作っているかもと錯覚しそうになるくらい、なんか初めて観た気分になってしまいました。


本作の主人公は高校の卒業まであと1年となった少女「レディ·バード」。
いい感じに拗らせていて、田舎から都会に出たい願望から進学先で母親と喧嘩したり、初体験の内容とか気にしてたりボーイフレンドのこととか、とにかくちょっとイケてない女子高生という感じ。
お国柄か生活圏の違いか、セリフのキレや発想は日本人には馴染みにくいものかもしれないけど、誰しもは一度は通ったことのある中二病チックな性格による黒歴史量産ムーブみたいなのがとっても愛おしかったです。

先日鑑賞したバービーと同じ監督グレタ·ガーウィグによる作品。バービーのときにも思いましたが、登場人物の一人一人の個性をとても丁寧に描いていて共感と好感の持てるストーリー構成が秀逸だと思います。
友情、恋愛、学業、進路、将来。多感な時期特有の決断力のブレ表現がホントにうまくて、主人公レディ·バードのその自分で名乗るあだ名とちょっとイタイ感じとか、逆にかわいらしいんですよね。
17歳特有の「私が主人公」感みたいなものが上手く現れている。そこから生まれる相関図もまた愛おしいわけです。

母親との確執も、母娘それぞれの愛情のすれ違いみたいなものだし、凄く丁寧に丁寧に描くので微笑ましくもあり、最後はグッとくるものがありました。父親との関係性もリアルですよね。

なんとなく私は、このまったく特別ではないけれども、一人一人に主人公としての人生があることを肯定されるようなストーリーがとても好きです。

シアーシャ·ローナンの不思議な魅力も注目ポイントのひとつ。
ちゃんとスクールカーストの下層っぽさがあってダサさみたいなものが醸し出されているのに、時々ちゃんと美しい人になる瞬間があって。そういう女性が大人になっていく成長過程みたいなものを上手く切りとられていて品のある作品だなって思いました。

2024年 45本目
マグルの血

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