イチロヲ

マクナイーマのイチロヲのレビュー・感想・評価

マクナイーマ(1969年製作の映画)
3.5
本能の赴くままに活動するジャングル出身の黒人男性が、不思議な力で白人の姿に変身してしまう。ブラジル文学を映像化している、ナンセンス・コメディ。

本能(煩悩)に忠実な黒人が、白人の姿を借りた状態で、サンパウロの都会へと飛び出していく。ちっとも英雄ではない青年の日常を、まるで英雄譚のように描写しており、悪賢い都会人に翻弄される様子を、不条理コメディとして落とし込んでいる。

急進派ゲリラの女と大恋愛したり、幸せを呼ぶ石を追い求めたり、演説するキリスト教徒と衝突したり、「白痴同然だからこそ真理を突いてくる」というモチーフが、最大限に活かされている。一般市民に囲まれた状態でのゲリラ撮影もインパクトあり。

「人間から自我を取り払うと、みんな同じ人間になる」ということを暗示させながら、肌の色で人間の優劣が決められてしまう現実をサラリと風刺。さらに深掘りすると、優生のイメージをもつ白人になっても、人生苦は大して変わらないことが伝わってくる。
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