えくそしす島

死化粧師オロスコのえくそしす島のレビュー・感想・評価

死化粧師オロスコ(2000年製作の映画)
-
【⚠️閲覧注意⚠️】

遺体への処置を淡々とし続けるその姿と、近隣で発見された死体等々を一切のボカシなしで映像に収めたドキュメンタリー作品。

“釣崎 清隆"

「死体写真家」として有名な彼が3年間に渡って映像に収め続けた人物がいる。それが

「フロイラン・オロスコ」

職業“エンバーマー"。
衛生面での予防や感染症の防止を主に、損傷を修復して防腐処理を施し、そして死化粧をする。故人の最後を手助けし、出来うる限り生前の姿に戻して遺族の痛みを緩和する。それが遺体衛生保全のお仕事。

★コロンビア★
今は治安が大幅に改善されたが、撮影された1990年代当時は世界でも最悪の国の一つといわれていた。特に首都ボゴタのにある(あった)”エル・カルトゥーチョ(火薬庫)”と呼ばれる地区では、麻薬、人身売買、殺人が日常的に行われている超危険地帯。

彼はそこで“低所得者の為に"最低限のサービスを安価で請け負っている。

正直、日本人の観点から見たら大雑把に感じるような処置が多い。それでも時折、オロスコの優しさや人間性が垣間見える瞬間もあって、この人自身から漂う不思議な魅力を感じとる事が出来た。

自分ならば「そのまま焼いて下しゃい!」と強く思ってしまったが、土葬が基本な国だとそうはいかない。感染症ダメ絶対。

ここからは表現が強くなります。
苦手な人はここでお戻り下さいませ。そんな方には邦画の「おくりびと」をオススメ致します。

又、心に致命傷を負う可能性があるので、グロ耐性指数が“強い↑↑↑“以外の方のご視聴はお控え下さい。

⭐︎僕と君との約束だぞ⭐︎

グロいし長文なので、最後まで読み進めることが出来た強者にはご褒美がアリマス。

⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️

「生者」と「死者」
の距離が遠い国と近い国

日本での死体は数字。
関連性がある職業以外だと、日常で死体や遺体にお目にかかることは身内や知人ぐらい。

それほどに遠く、またマスメディアの規制も強い。死者への尊厳。遺族感情への配慮。プライバシー。あれほど放送された「東日本大震災」の映像でも映されるものは「地震」「津波」「残骸」「火災」そして「生者」。だから現地で“実際の惨状"を目の当たりにした人とそれ以外の人とでは大きな隔たりがある。

タイなら死体を「魂の抜け殻」と考える人が多いのもあり、ニュースや番組にもボカシ無しで映ったりする。事故や殺人現場を掲載している雑誌、なんていうのも普通にある。悪趣味と一括りにする前に、死生観の相違であり死に対する概念の違いがまず先にある。

でも、撮影された当時の“カルトゥーチョ“は違う。蒸発するように人が殺される、なんて言葉があるくらい人間の命が軽くて死が身近にある。

その荒廃した街並に住まう人々。
街中の彼方此方で見つかる死体。死体から流れる血を子供がジャンプして通る日常。死との近さがエンバーミングを始め映像から溢れている。まるで別世界のよう。

作品の構成はたった二つだけ

1.「近隣で発見された死体の撮影」
晒された痛ましい遺体の数々。配慮が一切ない現場検証。見慣れたように集まる住民や野次馬、等々。

2.「エンバーミングしている撮影」
腹を切り開く。こぼれ落ちる臓物を切り刻む。ホルマリンをまぶしてタオルと一緒に戻す。眼球をヘラで抉るようにして位置を変える。頭部の修復には顔の皮をひっくり返し取り外した頭蓋骨に新聞紙を詰めてガンガン叩いてハメて戻す、等々。

それらを繰り返し繰り返しずっと見せてくる。局部も描写も行為も隅々までハッキリと。

エンバーミングの過程を見るとアレだし、値段も含め処置の方法が国や人でどの程度の差があるのかはわからないが、お棺に納まった姿を見ると、なるほど、綺麗になる。

たまたま魅力的な被写体(オロスコ)と出会ってしまい撮り続けてしまった記録映像ともいうべき作品。そして改めて「人間の死とは」その意味を考えさせられる。

ハイ、それではご褒美です。
さっそく明日から使える豆知識を伝授致しましょう。

“壇蜜はエンバーミングの資格持ち"

お疲れ様でした