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カード遊びのTnTのレビュー・感想・評価

カード遊び(1896年製作の映画)
3.3
 「優れた芸術家は真似をし、偉大な芸術家は盗む」というピカソの言葉通り、巨匠のささやかな真似事を見て取れる。今作はまんまリュミエールの「エカルテ遊び」である。

 違いはといえば、まずメリエス本人が中央にいることがまず一つに言えるだろう。これはもちろん作家性の一つであり、以降も彼は自作に出続けている。二つ目に、構図が言える。リュミエールの方は画面に収まりが良く、またテーブルは斜めに配置されて視覚的なリズムが生まれていた。対するメリエスは、やや画面の端に人物が寄っていてアンバランス、またテーブルもカメラに対し正対しており奥行きを感じない。リュミエールには及ばないものの、その奥行き表現のない平面的な画作りは後のメリエス特有の劇場型のセットへと確実に繋がっていっている。人物の動きも横から入ってくるだけで、奥行きのない平面的な動きであり、それもやはり劇場的だ。模倣って大事だなぁ、一見その模倣しそこねたエラーこそその人の作家性なのだ。なんか勇気をもらえるね、巨匠の努力って。また演技がオーバーなのもメリエスらしさだなぁ。芸術って”間違い”が無いな。
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