矢吹

氷の花火 山口小夜子の矢吹のレビュー・感想・評価

氷の花火 山口小夜子(2015年製作の映画)
4.2
美しいことは苦しいこと。
見た目がどうとかそんな簡単な話じゃない。
その、何度も大きく立ちはだかる、極上の苦しさの先にある、ほんの小さな、自分にとっては尊いかけらのようなものを、
楽しめる人、もしくは、
そんなお化けか幽霊じゃないと、
辿り着けない領域がある。
どの世界でも。孤高は孤高。
本物を見たら、頑張れるんだよな。
ドキュメンタリー。
一応、年毎くらいに定期的に、出会えていて、ありがたい。
持続力がどこまであるかは、置いといて。

ランウェイを歩き続けた20年。
周りのモデルやらなんやらが酒飲んだり、馬鹿騒ぎしてる時間に、本も映画も嗜んで、
着替える姿すら見えないといわれ、
自分をクリエイティブする能力も高すぎる。
しかも、ご自身のことを
小夜子さんって言うこともあったと。
小夜子と小夜子さんがいた。
YAZAWA以来に耳にしたエピソード。
私はいいけど、小夜子さんがなんていうかな。
のやつ。

極めて、0という数字に近いがゆえに、
完璧を感じてしまうような、ナチュラル。
阿呆なフリして、強引に、言ってしまえば、
目と鼻と口。それだけの顔。
髪型で隠された眉も。
これ以下でもこれ以上でも許されない美。
原点にして頂点というレベルのスタンダード。
こりゃ、あらゆる人が、魅せられて、
小夜子さんに取り憑かれるのも無理はないや。
東洋の美の象徴。日本の女性。
代表してもらえるならこんなにありがたいことはないって。ことだったんすね。
資生堂さん。ありがとうございました。
愛してます。

遺品の中の、たくさんの文学、映画。
目に入ったのは、寺山修司も、ツィゴイネルワイゼンも。
お話ししてみたかった、スタア。
面白い話してって、俺も言われたかった。

山本寛斎なり、たくさんのブランド、ランウェイ、コレクションのミューズとなり、
ダンスや演劇に傾倒したり、
晩年は、DJもしたり、素敵に生きてる人で、
もう好きにきてくださいって気持ちと、
もっと見ていたい人。
作る予定だった映画も見たかったな。

ずっと、少女の魂で。
何にでも、なれるんだってさ、
魂の自由があったってさ、
時間とは、美の所有物。
美とは、薪であり、その炎から我々は不死鳥となる。
ルタンスの金言、金脈だった。

本当に写真は、一瞬を永遠にしうるのか。

なんかさ、人間にとって、目力って命ですね。
アントニオ猪木もそうなんだけどさ。
目で語れる人たちだよなあ。
実際、口ほどにものを言うから、僕は、
日常では、結構目を塞いでるんだけど、
よくないかも。どんどん出そうかな。
出せるようになりたい。チカラが欲しい。

永遠の小夜子プロジェクト。
ぜひ、何代目小夜子と、続けてください。
ファッションの力と仰っていた、
みんなの取り憑かれた、憧れのあの人を探し続ける作業。素敵でしたよ。
ただ、再現とモノマネでは、
到達できないあの人の、
積み重ねてきた、滲み出る、
人間の、本の分厚さが、この世にはやはり存在しているという、証明。
にも、善意だけで言うけれど、
証明にも、なっていたと言うこと。

我々には時間をどうこうすることはできない。
美しさの追求には、どれだけ時間を取られても、それだけが存在意義だ。

小夜子さんの、お仕事の話。
すげえ興味深かった。
モデルという仕事では、完全に無心になると、
そうすると、忘我の末に、
着ている服が、どう動いて、どう歩けばいいか教えてくれるって言っててさ。

その後の、ダンスに走り出す小夜子さんに対して、山本寛斎さんの仰ってた、
ダンスの方面は、
俺たちがやってきたことと、真逆だよって。
洗脳されるなよって話も、面白かったっす。
確かに、ダンスは違うよな。
肉体とか身体に興味が向いてしまったわけだから、そして、人形になると、

自己表現をしないと気が済まなかったんだろう。そして、明らかに、やはり、
モデルとしての才能がありすぎて、ダンスなどは少し、チープにも見えてしまったりする瞬間はあったけど、結局ね、
それぞれ経て、
ランウェイに復帰した小夜子さんは
すげえ迫力があって、嬉しかったです。
もしあなたが歩き続けるのならば、
無駄な道などはないのです。
特に、ショーモデルは、歩くのですよね。
ほんで、
人生とは、歩くこと。って言ってた。
歩いて、つまづいた吐息がセリフになって、
バランスをとった手が、ダンスになる。
歩くことが生きることだと、表現を模索する唯一のことだとしましょう。
歩かないとダメですよ。
あがったやつから終わっていく。
終わったからあがったのか、知らないけれど、
自らの意思で、
好奇心に息を吹き込み続けるかどうか。
ってわけもあるでしょう?

魅力ある人になりたいと思うこと。
それが1歩目だと、高校生たちに伝えてた。
魅力ある人になり続けてください。
なりたいと思い続けてください。

ちょっとだけ心残りは、
最後のインタビュー、
みんなに同じ質問したやつ。
みんなのやつ聞きたかったっす。生の声で。

お恥ずかしいことに、遅ればせながら、
この人のことを、知れて本当によかった。
制作していただいて、ありがとうございました。

苦悩に飛び込む気概が生み出す狂おしいほどの美しさ。
苦しさを乗り越えていないハリボテの美しさに、負けるわけがない。
ということは、
俺は今、すげえ苦しいからさ、
すげえ美しいってことだよ。
汚ねえ花火だ。
矢吹

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