矢吹

青春の矢吹のレビュー・感想・評価

青春(2023年製作の映画)
3.9
予告の時に感じた、瑞々しい学園ものみたいな雰囲気よりも、非常にヒヤヒヤしながら続いた215分。
そりゃそうなんだよな、いつか終わる義務教育みたいな、ピカピカの制服にアイロンを当ててもらえっぱなしのような青春では、もちろんなかった。

長江デルタ地域、中国の子供服工場。
30万人が出稼ぎ。
終始、ミシンの音と愛の囁きが鳴り響く。
個人的にミシンが、小学校の頃から苦手で、無駄にハラハラさせられたのもあんだろうけど、
青春というタイトルには、勿論しっかりとふさわしく、18から37歳くらいまでの男女が、住み込みで働く。平均年齢22くらいかな。
この共同生活は、大学でもシェアハウスでもなく、どちらかというと小学校みたいな距離感で、でも体はしっかり大人で、コミュニケーションの取り方が日本とは当たり前に違うから、身体的接触が基本で、言葉の方が順番が後から来る感覚。

ここに先生はいなくて、社長との雇用関係のみで、労働と恋と生活が蔓延してる。

誕生日会も、クリスマスもね。

しかし、体を乗り越えて出てくるトドメの言葉が、まんまと、その言葉達が、めっちゃ真っ直ぐで軒並み素晴らしい。
君の過去よりも君の未来になりたい、だとか、
まるで愛に嘘がない。
その愛が、時間と共に不思議と嘘になった経験も恐らくまだない。
ランデブーへのお誘いも、断り方もちゃんとお互い強引で少しバイオレンスである、というところで取られたバランスの攻防。
羨ましくも慌ただしくも妬ましくも恐ろしい
そういう青春。まじでありがたい映像。

こうして、100以上打たれた番号の工場の中の10個ほどの生活にお邪魔したわけですけど、
もちろん、それぞれやってることが面白いくらいほぼ変わらない。恋に仕事に賃上げ運動。環境が人を作るもんだよなとも改めて。
一辺倒の生活リズムじゃなくて、あるは、あるんすけどね、ドラマとかスマホとか。
だから、そこで孤独に、にけつ!!とか、ごっつええ感じとかを嗜んでる人も絶対いたとは思うけどね。回したとて映りにいかないだけで。
1番変化があったとしたらそれぞれの工場の社長のスタンスだったかも知らない。

あとは、
この住み込みで貯めたお金で、みんな違う場所で、自分の生活をまた始めていく段階なんだろう。
青春とは、それこそ故もだ。
幸あれ。
矢吹

矢吹