このレビューはネタバレを含みます
【トカゲのおっさん】
21歳の春5月、「レッドロブスター」の2,980円食べ放題を食べた日、私の甲殻アレルギーは発症した。
…のとは全く関係のない「ロブスター」というタイトル。内容的にも、どう必須ではななかった? なんなら「ミツユビナマケモノ」でも「オオコノハズク」でも良かった? 唯一、関係があるとすれば…(後述)。
休日、空き時間にフラっと入った、またもやぶっつけ本番的な鑑賞。予告編は目にしていたから、奇妙な世界観のコメディ作品という認識で観はじめた。
鑑賞中、鑑賞直後は全然スカっとしないけど、かなり考えさせられる、後々からジワジワくるタイプの映画。好きなジャンルではないけど評価は出来る作品。でも、人にはあまり薦めにくい。
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(ネタバレ含む)
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独り者は、45日間という期限内にパートナーを見つけないと動物に変えられてしまう。主人公(コリン・ファレル)が希望を訊かれ答えた動物が「ロブスター」、故のタイトル。
そのルールに則り、変えられんがために四苦八苦する、あるいは変えられた人たちの姿がユーモラスだったり、人としての前世を彷彿さる行動を動物たちが見せる等のコメディタッチを期待して観ていたが、もっと風刺の効いた、相当ブラックなユーモアがちりばめられた怪作だった。
一見、不条理な近未来を描いているように思うが、実は強烈に現世の社会通念を尖がらせていった世界観がそこにある。今の世も、動物にされないまでも、ある一定の年齢までには結婚することが常識とされていないか? 愛には、同情の感情は含まれていないだろうか? 同病相哀れむ親近感を愛情と勘違いしていないか?
そんな互いの欠点や共通点がカップル成立のカギとなる設定。ルールに縛られる世界。現世でも無意識に我々を縛る強迫観念を極端に先鋭化すれば、こういうことなんだよと皮肉られていることに気付かされる。
あぁ、実にシュールなコントなんだ、これは。なぜかふと「ごっつええ感じ」の”トカゲのおっさん”を思い出していた。あの面白さが分かる人は、この映画の面白さが分かるのではないだろうか。
笑っていいのか悪いのか、常にゾワゾワしながら、どうにも落ち着きどころのない気持ちを抱えながら観終えたのはある意味正解なのかもしれない。
この世の中も、実は冷静に突き詰めて考えると、おかしな常識に支配された、なんとも気持ちの悪い社会なのかもしれないのだから。
タイトルの「LOBSTER」に意味があるとしたら、映画の最後エンドロールに波音がかぶさる。つまり主人公は…。