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我が道を往くのBaadのレビュー・感想・評価

我が道を往く(1944年製作の映画)
5.0
アカデミー賞特集でたまたま録画していたので見た作品。

ビング・クロスビーについては『ホワイト・クリスマス』で歌っていた人程度の認識しかなく、『マイ・ウエイ』とこの映画のタイトル曲の区別もつかない状態で鑑賞。これを見て初めてジャズの人だったのだと分かった次第。主題歌の『星にスウィング』を弾き語りで子どもたちと歌うシーンは魅力的でした。

それにも増して魅力的だったのは、ビング・クロスビー演ずるところのオマリー神父のかつての恋人だったらしいオペラ歌手ジェニーのステージ場面。『カルメン』の『ハバネラ』を歌うシーンなのですが、実に品格のある誘惑シーンです。この時代の映は制作された国を問わず舞台で女性歌手が歌うシーンが多く、とくにサークがドイツでとったものなどは素晴しいのですが、それらと比べてもこのシーンの演技は際立ったものです。
完全にノックアウトされました。映画でこれ以上美しい歌声を聴いたことはなかったような気さえします。
ジェニー役のリーゼ・スティーヴンスは実際に当時のメトロポリタン・オペラの歌手だったようですが、映画での表情の演技も見事で、原節子さんによく似た上品であでやかな女性です。(オズの国の良い魔女、グリンダのような雰囲気の人だな、と思ったら実際にTV版では声の出演をしたことがある様子。)心無しか小津映画に置ける原さん表情の作り方や原さんへのライトの当て方もこの映画でのそれとよく似ているように思えます。
小津監督はこの映画、お好きだったのでしょうか?時代からして、この映画の舞台を日本家屋に移し替えて設定をアレンジしたのが『晩春』の原案の一部になっているのかもしれないな?とさえ思ったりもしました。

本筋の教会を巡る物語や、一見牧歌的に見えても正攻法の、この映画での少年たちと大人たちの幸福なの関わりの描写は、今でも一見の価値があると思います。

(艶やかなプリマドンナ 2009/03/17記 一部訂正)
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