映画大好きそーやさん

ラ・シオタ駅への列車の到着の映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

2.4
「映画」の到来に重なる、列車の到着。
『工場の出口』に並ぶ、「映画」の歴史幕開け作品群の1つです。
正直に言うと、『工場の出口』よりは語る意味がないように思う作品でした。
というのも、『工場の出口』以上にまとまりもなく、ただ映した、記録しただけに見える映像のどこを語れば良いのやらと困惑してしまったのが大きいです。
本作を高く評価する方も沢山いましたし、ビクトル・エリセ監督の最新作『瞳をとじて』でも引用されていたと記憶しているので、私も自分なりにどこが良かったのか、またなぜこんなにもハマらなかったのかを考えてみたいと思います。
内容としては、『工場の出口』同様シンプルで、画面奥から列車が近付いてきて停車し、乗客が乗り降りするといったものとなっています。
列車が駅に近付いてきた際に、おじさんがこちらに走り寄ってくるのは微笑ましくて好きでした。
列車に到着を待っていた人が乗っていたのでしょうか、それとも単純に列車と併走してみたかったのでしょうか、どちらにせよ実に人間的な行動で、そういった行動を映像として残せているのは面白いと思います。
止まるのを今か今かと待って、停車し次第一目散に列車を飛び出す男がいるのも印象的で、彼のバックグラウンドも想像してみたくなりました。
多くの人々を映しているからこそ、彼ら彼女らの人生の一端を、画面上で刹那的に交差する感動を、永遠に残り続ける媒体で保存できているという奇跡に酔いしれることが、本作の本意といったところでしょうか!
ただ、やはりまとまりのなさは見逃せないポイントで、私個人としてはそこに引っ掛かりを覚えたのだと思います。
あと、何人かカメラ目線になっていたのも、没入度を下げる大きな要因でした。
『工場の出口』は、直接的なメタファーのようなかたちで捉えられる内容があったにも関わらず、本作は列車や人間の運動を映しただけに留まっている気がして、どうにも浅さというか、これ(列車の到着の場面)である意義性の薄さを感じざるを得ませんでした。(冒頭で書いた「映画」の到来のメタファーが1番しっくりきますが、皆さんはどうお考えでしょうか?人々が列車を中心に動くというのも、良く考えれば筋を通せる気がします。この考え方は、当たらずも遠からずかもしれませんね)
総じて、展開の飛躍はないものの、そこにいる人々や状況をよく映し取った1本でした!