最近の濱口監督の撮影方法論と似ても似つかないもので、今ほど洗練されていない。
特に、画角の中心に被写体を置くことを一々避けるのも、なんだかストーリーと撮影が隔離されている気にさせる。
ただ結婚式での誓いのキス、あの浮気相手のフェードアウトの仕方は好き。
相変わらず三角関係、浮気、そういった男女のあれこれが題材になっていて、尚且つ浮気された側が悪い的な論調が出てくる。(今回に関しては「私何言ってるんだろ…」という自己言及がある)
『ドライブマイカー』の時には村上春樹成分だと思っていたそれは、濱口印だったんだなぁと他濱口作品を色々観て思ったり。
意外だったのは今回かなりコメディ調になっていたところ。こんなに笑える箇所を用意しているのも珍しい気がしている。(『偶然と想像』とかかなりコメディよりだが)
特に父親のあまりに記号的な振る舞い、弟の淫乱呼ばわりなんかがカオスな群像模様を作り出していて良かった。
また相変わらず音楽や方言がもたらす豊かさみたいなものには自覚的。音楽に関しては長岡亮介を配して、あくまでインの劇伴として印象づけてくる。その効果は曖昧だが、謎に豪華な感じはする。方言はやはり、その人の過去と今、地方と都会のように、二面性を浮き彫りにする効果によって、人の多面的な性質を浮き彫りにするようで、使い得だなぁと感じた。
NOT THE END ここで終わらないということの地獄を予感させる。ここから大変なんだと。多くの濱口作品が「ここから」を示しているし、喜劇では終わらない後味がある。
長岡亮介
