鬼教官の人権無視した罵倒も、粛正され統制された宗教団体のような楽団も、極限まで狭まった視野で一芸だけを突き詰める毎日も、安穏とした家族や恋人にイライラする気持ちも、果ては交通事故を起こすまで追いつめられていることに気がつかない錯乱状態も、全部経験したことがある。
痛いほどにわかる。
そんな人は多いと思う。
でもこの映画がすごいのは、「その先」があること。
私はあの終わりは、狂乱とも痛快とも感じなかった。
楽しいとも怖いとも、良いとも悪いとも言い表せない後味だけがひたすら残る。
私は「その先」を経験することがなかったが、この映画のおかげで「その先」を知ることができた。
この映画の言わんとすることがわかる(わかった気になれる)のなら、かつての狂っていた毎日も良い経験だったと言える、、、かも。
もうひとつ。
タイトルは『セッション』だけど、この映画では指揮者とドラムしか見えて&聞こえてこない。
それってセッションになっていないんじゃないかな。