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セッションのRyuのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
3.9
偉大なジャズドラマーになる夢を持つアンドリュー・ニーマンは、アメリカ最高峰の音楽学校 シェイファー音楽院へ通っていた。ある日、アンドリューが1人で練習していると、指導者として名高いテレンス・フレッチャーと出会い、自身が指揮するスタジオバンドチームへ引き抜かれる。初日の練習でアンドリューはフレッチャーの鬼指導者っぷりを目の当たりにする。

取り憑かれたようにイカれた指導者と、それに呼応しようとどんどんおかしくなっていく生徒。
観ている最中は、フレッチャーのキングオブパワハラにこっちまでノイローゼになりそうなくらい苦しかったです。理不尽な罵詈雑言、暴力。その行き過ぎたレッスンはまさに狂気のさたです。確かに指導力はあるのかもしれない。でも、何故誰も彼を止めようとはしないのですかね。自身に矛先が向けられるのが怖いからなのは分かるんですが、こんな先生の元にいてまで、このバンドに執着する理由があんまり分からなかったです。やはり芸を嗜む者としては、最高峰のバンドで自分の腕を発揮することが最も重要なんですかね。何かにちゃんと取り組んだことがない身からすると、逃げる という選択肢がないことに非常に違和感を覚えました。
そんな苦しみが続けられてからの、あのラスト9分間。終わりよければすべてよし とはまさにこのことなんじゃないかと思うくらいの圧巻の締めくくりでした。ボロボロにされたアンドリュー、キャリアを潰されたフレッチャー。彼らは、間違いなく互いを憎みあっているはずなのに、間違いなく繋がっていた。パッと見、アンドリューがフレッチャーを喰っているように見えますが、フレッチャーがアンドリューをここまでにした という意味ではフレッチャーが支配権を握っているようにも思えます。互いの食らいつくような狂気がぶつかる時、そこには喜びを感じる2人の姿がありました。普通ではありませんが、とんでもない爽快感・カタルシスを感じるラストシーンでした。
そんな狂人たちを体現したマイルズ・テラーとJ・K・シモンズの怪演がホントに凄まじかったです。J・K・シモンズのフレッチャーは、人を潰せちゃいます(笑)。これはオスカーも納得です。マイルズ・テラーもかなりいい演技をしていますし、ドラムの演奏もすんげぇ。音はプロのものをあててるみたいですが、腕の動きがハンパなかったです。2ヶ月間、毎日3、4時間も練習し、手の血もマイルズ・テラー本人のものらしく、その努力には頭が上がりません。
録音賞と編集賞でもオスカーを獲得しているように、聴覚と視覚からも非常に魅力を感じました。純粋にジャズがめちゃくちゃカッコイイし、ラストシーンを筆頭にカメラワークやカット割りも音と合っていて見事です。
こんな作品を若干28歳の監督が撮ってしまうってのも、これまた狂気ですね(笑)。
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