くまちゃん

キートンの隣同士のくまちゃんのレビュー・感想・評価

キートンの隣同士(1920年製作の映画)
4.0
塀で隔てられた恋人たち。
想いが強ければ強いほど親の反感を買い、騒動は大きくなる。
ロミオとジュリエットをモチーフに、キートン節を効かせた喜劇。

階段の手摺を頭から滑り落ちるシーンは63年後に「プロジェクトA」にてジャッキーが再現している。

バナナの皮で滑るなんて古典的だとは思っていたがこんな昔からあったとは。

3人肩車でアパートを往来するのは曲芸の域。さらに途中真ん中が抜け落ちるダルマ落とし的妙技を見せる。
しかも頂上にいるキートンはヴァージニアを抱いたままだ。
キートンの体幹と脚力どうなってんの?

ずっとボタンの掛け違いを見せられてるような上質のコント。
キートンの尋常ならざる運動能力が遺憾なく発揮され、空間を大きく使った渾身のアクションは今見ても尚色褪せない。

というか現代でこんな無茶する人はまずいない。トム・クルーズくらいか?🤔
ジャッキーも長年の無理が祟ってあまり身体が動かないようだし…

ヴァージニアの父を演じたジョー・ロバーツはキートン映画の常連であり、今作に於いても圧倒的な存在感を放っている。165cmのキートンに比べ、ジョーは191cm。同じ生き物とは思えない人外な雰囲気さえある。サイレントで声は聞けないが、吹き替えを当てるとしたら内海賢二あたりが似合いそうだ。

ちなみにキートンの父を演じたのは、キートンの実父、ジョー・キートン。

泥だらけのキートンと、黒人が間違われる場面は差別的にも見え、批判の集中砲火を浴びそうだが、それもまた時代だろう。
時代に関わらず人種差別など論外だが、多かれ少なかれ人の欠点や特徴を面白がる事がお笑いの根底にあり、一番単純な芸と言える。
差別なのか、いじめなのか、迫害なのか、ルッキズムなのか、
それは当事者しか知り得ない、他人が判断できることではない。ホロコーストのようにわかりやすければ話は別だが、見た目を茶化す、だから差別というのはいささか思慮に欠けると言わざるをえない。
黒人のものまねをしたお笑い芸人が炎上してしまう現代よりむしろ自由と呼べるのかもしれない。
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