Omizu

フィル・ザ・ヴォイドのOmizuのレビュー・感想・評価

フィル・ザ・ヴォイド(2012年製作の映画)
3.6
【第69回ヴェネツィア映画祭 女優賞】
ラマ・バースタイン監督の長編デビュー作。インディペンデント・スピリット賞でも第一回作品賞にノミネートされた。

厳格なユダヤ教徒一家の娘が結婚をめぐって人生、そして家族というものを見据えていく様を描いている。極めてプライベートな内容、演出だが、それを社会構造に捉え直していくというのが上手い。

長編デビュー作とは思えないほど貫禄のある作品で、安心して観ていられるクオリティ。

姉の不意な死によって人生が変わってしまう。それにどう対応すべきかという困惑。家族というものが持つ面倒くささに(いい意味で)イライラさせられる。

自分の意思ではなく結婚させられるのがどんなに苦しいことか。たとえ直接強制されたものではなくても。「自分の選択」に任せられてしまうという息苦しさ。自分で選んだとはいえ何と選択肢のないことか。

家族という牢獄に閉じ込められる若い女性。繰り返し描かれているテーマではあるが、ユダヤ教徒一家という舞台で描かれることにすごく意味があると思う。

少々地味すぎるかもしれないが、囚われた女性を丁寧に描いたなかなかの秀作。
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