ごじゃ

フリクリのごじゃのネタバレレビュー・内容・結末

フリクリ(2000年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

絵のグラフィカルな要素を追求したリミテッドアニメーション。海外のフルアニメーションの文脈から外れた日本独自のリミテッドアニメーションの真髄を観ることができる。少ない作画枚数でこうも印象的でメリハリのある画面が作れるのかと感嘆する。むしろ少ない作画枚数だからこそ可能なのかもしれない。絵が滑らかに繋がるかを意識して作画枚数を増やし、綺麗にまとめるのではなく、大胆にポーズからポーズへと飛躍し生き生きと動き出すキャラクターたちは、現実のあらゆる制約から解き放たれ、自由へと跳躍することのできるアニメーション本来の魅力を私たちに再発見させてくれる。
また、止め絵や、前述と対照的に細やかな動きによる心情描写も特徴の一つと言える。大胆な動きと対比するように描かれるそれらは、絵に現実的な肉体を感じさせる。押井作品などリアル系と評されるものほどではないが、この作品では動の部分があるからこそより静の部分が現実感をあたえ、印象的な場面に仕上がっている。また、その現実感があるからこそ作品が地に足付き、動きによる飛躍の揺るぎない土台となっているのだろう。
そして、全編における郷愁のイメージもこの作品の強い魅力だと感じる。どこか色褪せた色使いはもちろん、背景を必要な情報だけ残して可能な限り省略し、キャラクターも端役は背景に溶け込むように色褪せさせている。そうすることにより、観客が画面の空白に自身の記憶を重ね合わせることが可能となり、アニメの世界が、まるで「かつて自分が存在したあの町」のように思えてくるのである。そうして生まれる郷愁のイメージは、この作品に動き以外の方面から別種の魅力を与えている。
バカらしくもどこかカッコいいこの作品は、日本アニメの到達点の一つといって良いだろう。
ごじゃ

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