ビッテン

黄金のメロディ マッスル・ショールズのビッテンのレビュー・感想・評価

4.0
スタジオミュージシャンやファンク・ソウル系の音楽が好きな人なら見るべき映画。配信とかないから見る機会は少ないと思うが…

当時ヒット作を生み出しまくったマッスル・ショールズという音楽スタジオについて取り上げた映画。インタビューや当時の音源をつなぎ合わせたものになるのだが、この構成の仕方がうまい。思わずウルッとするシーンすらあった。

そして物語としても素晴らしい。まず、このスタジオが作られたところにある川の説明から入る。太古の人々はここから音楽を感じていたんだ、と。ソウルってそういうこと!?となかなか斬新な切り口だった。ふつうだったらスピリチュアルなこの切り口にゲンナリするのだが、なんかエモいのだ。映画の演出力の妙。

白人のバックミュージシャンたちが、パワフルな黒人音楽を作り出していたという事実も面白い。彼らもミュージシャンとして、彼らをリスペクトし、学び、進化させてきた。音楽の中では彼らは対等だったわけだ。

一番好きなのはオールマン・ブラザーズを結成することになるデュアン・オールマンのエピソード。スタジオに入れさせるまでテントで座り込みを実行。仕方なく入れてやったらとんでもテクのギタリストだったというエピソードが最高にロック。そこにwilson pickettと録音したHey Judeのカバーが最高。これはデュアンのほうから提案したらしい。

そしてこの映画を通して中心となるのはこのスタジオ作ったリック・ホールという人物。彼の鬼プロデューサーとして辣腕をふるっていた。年老いた今でも、穏やかな目の中に、当時を感じるギラツキがあり、カッコイイ。彼が語っているだけで絵になるのだ。
彼の父親とのエピソードと、その歌詞、そしてそれを歌ったボーカルのトークは、グッと来るものがあった。

廃盤かつ配信もされていないのが本当に残念。音楽好きの多くの人に見てほしい映画だ。