LEONkei

インポート、エクスポートのLEONkeiのレビュー・感想・評価

インポート、エクスポート(2007年製作の映画)
2.5
そこに入る理由が有れば出る理由も有る、同時に行きたくても行けず帰りたくても帰れないことも有る。


「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。」『方丈記』


無慈悲な環境下から脱する為にウクライナからオーストリアへ向かうシングルマザーのオルガ、オーストリアからウクライナへ義父の仕事を手伝いバンで走る常に不機嫌で満たされないポール。

ふたつの国境を越えた物語は感覚的に島国の日本人には理解しにくいかも知れないが、陸続きの欧州越境は希望であると同時に国を離れざるを得ない無情感に苛まれる。

ウクライナは出稼ぎ国家とも言え労働人口のおよそ半分が外国へ仕事を求め、2014年以降はロシアからポーランドを中心に欧州へシフトしてきた経緯がある。

単一民族で平和ボケした今の日本人に国境の意味すら忘却の彼方に葬り、今の日本の平和が永遠に続くだろうと何の疑いを持たず白痴と化す。

ぬるま湯にどっぷり浸かる茹で蛙状態は近い。


凍てつく寒さに耐えながら力強く生きるオルガとポールは感情さえ凍らせるが、秘めたる思いは煮えたぎる赤道直下の灼熱の太陽より熱い。

随所に観られる素晴らしい構図やシーンも多々あるが、映画全体としての繋がりや構成に物足りなさを感じてしまう。


人間は「生きてるだけでえらいんだ」なんて言う人もいるが、果たして本当にそうだろうか…。

生きたくても生きられず逝きたくても逝くことができない無情の世界に包まれ、行くも地獄戻るも地獄に一体誰がしたのか…。

何もしないで自然に生きることなんて人間にはできない..★,
LEONkei

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