ブラウンソースハンバーグ師匠

6才のボクが、大人になるまで。のブラウンソースハンバーグ師匠のレビュー・感想・評価

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長尺寄りの映画でも、ここまで流動的に観られる会話ってすごいな……。こんな才能が欲しかった。
あと、流れる音楽にいちいち「なつ……」と反応してしまう。

家族との不和で引っ張れそうな展開を、パッと分断し、次のシーンでは軽快なコメディで進む。その良いことと嫌なことの混在が時間の流れにリアリティを生んでいると感じた。不可逆的な時間を想起する間合い取り方と言おうか、監督作からは同窓会的なキラキラもありつつ、そこに偏り過ぎない一定のマナーを感じて素晴らしい。

正直に言うと、前はこの映画が好きではなかった。
「同じ俳優を12年間撮影」というノンフィクションに、観客のバイアスを集め手放しで評価させる魂胆が見えてしまうのと、実際の年月を費やさなくても「12年間」はフィクションの力で遜色ない再現が出来ると思うからだ。

そういう意味で、この映画のような実時間の連続性よりかは、ビフォア三部作や「トレインスポッティング2」のように、実時間の空白を利用し、観客と時間の不可逆性について共犯関係を結んでいる映画の方が好きだった。

再鑑賞して思ったのは、その楽屋落ちとも言える要素が、どんどん希薄になっていくことだ。「本当の12年間」というノンフィクションに、そもそも監督は大して頼っていない気がする。監督の手腕によって作られたフィクションが強固である為に、ノンフィクションが極めて自然に溶け込んでいるような印象を受けた。

かと言って、実時間を利用しようと思わなければ、1年周期で家族をモニタリングする構想にはならないだろうから、この挑戦的な企画は必然であったのだと思う。