人間の愚かさを題材にした風刺画家ラルフ・ステッドマンの半生に迫るドキュメンタリー。ハンター・S・トンプソンの右腕として一緒に働いた人物なので、ハンター作品に執着するジョニー・デップが、ラルフの自宅を訪問インタビューする。
過去の記録映像と創作の作業工程が交錯するかたちで本編が語られていく。実質的にラルフとハンターによる「変人同士の友情物語」になっているため、ハンターのドキュメンタリー映画「GONZO」と併せた鑑賞が最良。
ラルフの作業行程では、「芸術にルールはない」を地で行くものを見せてくれるため、いやが上にも興味を刺激させられる。とりわけ、ポラロイド写真を直接加工するという、人力フォトショップが面白すぎる。
一番穏やかそうに見えるラルフが、実は一番クレイジーなのではないかという性格診断が印象に残る。物静かで温厚な人ほど、心の奥底では革命的な怒りの炎を燃やしているということ。これは万国共通と言えるだろう。