TAK44マグナム

プールサイド・デイズのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

プールサイド・デイズ(2013年製作の映画)
3.8
3点?自分の尺度で勝手に人をはかるんじゃない。


先日観た「ウォールフラワー」と同じように、コミュニケーションが苦手で内に引っ込み思案な主人公が、自分を理解してくれる相手と知り合うことによって成長し、救われるというお話。

監督・脚本のナット・ファクソンとジム・ラッシュは出演もしており、両人とも良い味だしてます。

「ウォールフラワー」の主人公はトラウマを抱えていましたが、本作の主人公ダンカンには「居場所」がありません。
両親は離婚し、どちらも新しい恋人をつくっている。
母親についてきて、その恋人の別荘へ一夏のバカンスにやってくるところから始まりますが、どうやら母の恋人からするとダンカンは若干、邪魔者っぽいのでした。

仕方なく、ダンカンはチャリンコで街へ行きます。
別に当ても何も無いのです。
ただただ、あの別荘にいたくないからなのです。
しかし、ふらっと立ち寄ったカフェで、ビデオゲームに行じる不思議な雰囲気をもつ男と出会います。
それが、自分の運命を変えるほどの出会いだったなんて想像もしないダンカン。
その男、オーウェンはダンカンを自分が働くウォーターパークでアルバイトをしないかと誘うのでした。

ジェシー・アイゼンバーグ主演の「アドベンチャーランドへようこそ」とも似たところがありますが、あちらほど恋愛要素は多くないです(隣の家の娘とのちょっとした交友はありますが)。
あくまでも、ダンカンの成長、そして母親の成長に主軸をおいた母子のドラマとなっております。

ウォーターパークで働き出すまでがけっこう尺をとっていて、じっくりとダンカンの窮屈な思いを描き出していますね。
唯一の心の拠り所であるはずの母親も、自分の恋愛のことに気持ちが向いていて、ダンカンの心情までは思いが及びません。
ダンカンの事がまったく分かっておらず、家族がうまくいくようにと無理を強いてしまっていることに気づいていません。
そんななので、ダンカンはたまらず朝から晩まで別荘に寄り付かなくなってしまいます。
そこでどこに身を寄せるかというと、ウォーターパークなのです。
そこでだけは彼は自由で、みんなが慕ってくれますから(もちろん、それはダンカンの周囲に溶け込もうとする努力があってこそです)。

チャランポランに見えて、その実、ちゃんと他人を理解できる大人な男オーウェンをサム・ロックウェルが演じておりますが、本当にこのキャラクターは最高にイカしてましたね。
ダンカンをだきしめる時の優しい眼差しが魅力的でグッときます。
一見するとグータラでどうしようもないんですけれど、彼を慕って集まってくるスタッフたちは、一緒に働いていて何だかんだ言っても楽しそうなんですよね。
みんなを受け入れる港のような男なんです。
だから、流浪していたような人間が集まってくる。居場所を求めて。
オーウェンも、それを敏感にキャッチしてくれる。

でも、ダンカンはまだ少年であり、これからまだまだ未来があります。
だから成長した彼は、みんなの「夏の思い出」となるのです。
ただし、ダンカンは今までとは違います。
戻ってこれる居場所を見つけることができたのですから。

ダンカンに「おまえに点数をつけるなら10点満点で3点だ」などと嫌味を言うような男であり、母の恋人である役を演じるスティーブ・カレルも演技巧者で、彼なりに父親になろう、家族になろうとしていることは伝わってきます。
ただ、理想とする生活が微妙にズレていることに気づくのが遅い。

結局のところ、ダンカンにも母親たちがこの先どういう結論をだすのかわからないのでしょうけれど、ラストの母親の行動が、少し先に訪れる未来を暗示しているかのようでした。

評価が高かったので気になり、ブルーレイを購入したのですが、先に「ウォールフラワー」を観てしまったために少し期待値からは遠目に思えてしまいました。
それでも、サム・ロックウェルがとにかく最高なので、これはこれで心に残る一作となりましたね。


セル・ブルーレイにて