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なにもこわいことはないのodyssのレビュー・感想・評価

なにもこわいことはない(2013年製作の映画)
1.0
【少子化の原因を描いた映画・・・】

制作側の意図がよくつかめない映画です。

この映画のポイントはヒロインですが、制作側がヒロインをどう捉えているのかが分からないからです。

ヒロインは夫と東京の山の手に住んでいる。といっても住居は狭くて、裕福というわけではない。彼女はポレポレ東中野を想定しているらしい東中野の映画館に勤めている。夫ももちろん働いていますが、夜遅くなることが珍しくない仕事らしい。夫の仕事の中味は分かりません。

夫はしばしば寝坊をしているヒロインより先に起きてコーヒーを入れてくれたりする。休日には洗濯もやってくれる。夫の両親はすでにいないらしい。詳しくは不明ですが二人の住居にある仏間がその暗示でしょうか。

他方、ヒロインの両親は健在で東京の少し離れたところに暮らしているけれど、ヒロインはしょっちゅう両親とは行き来している。

夫婦は子供を作らないと決めている。ヒロインが母にそのことを話しても、無理に子供を作れとは言われない。そもそも、ヒロインも一人っ子らしいのです。

やがてヒロインは妊娠しますが、一人で婦人科医にかかって中絶します。あとでそれが夫にバレますが、そして夫は必ずしも妻の行動に納得はしていないのですが、それで二人が深刻な不和に至ることもない。

何が言いたいんでしょうか、この映画は?
私なりに忖度すれば、日本の少子化の病理を描いている、ということかな。
冗談ではないんですよ。
子供を持たずに、いつまでも自分が子供時代のままで生きる。このヒロインがやっているのはそういう生き方です。

でも、制作側にそういう批判的視点があるかというと、ないような気がします。
だから、何を言いたいのか分からない映画になっているのです。
分からないなりに芸術的、というほどでもない。そこまでの「深さ」はありません。
ヒロインはもっともらしく宮澤賢治を読んだりしていますけど、彼女が宮澤賢治のように生きることの意味を真剣に考えているとは思えない。宮澤賢治はたんなる飾りにしか見えません。
或いは、宮澤賢治を出せば芸術的に見える、という制作側の浅い思い込みがあったのかも知れません。

だから、このくらいの点数を付けるっきゃないんですよね。
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