【過去に観た映画】2014.1.31
映画を観る前にと、原作を読んでいたが、原作に忠実で、かなりイメージ通り。
原作では昭和の街並みだとか、いろいろな場所のシーンがあるが、映画は、ほぼ昭和モダンの赤い屋根のおうちを中心にされ、余計なサブストーリーは排除して、女中タキと奥様 時子の二人をクローズアップしている。
「着物」をモチーフにした“秘密”の出し方は上手いなあと感心。
それは原作のものを忠実に映画で再現されていた。
現在と昭和中期の過去が交錯する構成は「永遠の0」とかぶるが、長さを感じさせず、見応えがあった。
昭和の蓄音機、洋館、和洋折衷、着物など、美術的にもよかった。
道ならぬ恋ではあるが、官能的でも情念的でもなく、とても上品に表現されていた。
さすがは、「家族」を撮り続けてきた山田洋次監督。
女優陣がよかったなあ。
奥様役の松たか子は、笑顔より、すねたような怒った顔がなんともいえず魅力的で、多くを語らずとも、
彼女の瞳が恋していく「女」に変わって行く所が見事だった。
表情は、映画ならではの味わい。
タキ役の黒木華の初々しさと奥様への忠誠心がすごくハマっていた。
この人、エキセントリックな役も似合うが、こういう素朴で生娘みたいなのもいいね。
タキの晩年を演じた倍賞千恵子はやはり、味わい深い。
彼女の演技で涙した。
自分の祖母にも重ねてしまって、彼女の泣きながらの台詞には胸がつまった。
声高に戦争をテーマにかかげてはいないが、小さななおうちが壊れていくさまは、とても胸が痛く、戦争という惨さをたたきつける。
ただ、板倉役はちょっとなあ。
この役だけは他の人だったらなあ……。
時子、板倉、タキそれぞれの行いに対して、不快感を感じる人もいるかもしれないけれど、観終わって、とても考えさせられる話しだった。
秘密は秘密のままがいいのだ。
山田洋次監督が原作を読んで、映画化したいと強く想ったというだけあって、丁寧に描かれていて、
とてもよかった。
「婦人公論」2/7号に倍賞千恵子と山田洋次の対談「映画界でタッグを組んで半世紀」が掲載。
女優と映画監督して、50年間も共に映画を作ってきた二人の話。
互いの映画への想い、信頼関係の深さが垣間見える。