ヴィクトリー下村

アルプスのヴィクトリー下村のレビュー・感想・評価

アルプス(2011年製作の映画)
3.7
新作『哀れなるものたち』の公開が控えるギリシャの奇才ヨルゴス・ランティモスの初期作品。JAIHOにて鑑賞。

ヨルゴス・ランティモスってやはり初期作ほどシュールで尖りまくってる。

「結婚できない男女は動物にされる」とか「呪いを回避するために家族の誰かを生贄にしなければならない」など、ランティモスの作品って奇抜な設定が共通してるけど、今作も「今回は親しい人を失った人のためにその人の代役を演じる」不思議なグループが題材となっている。

設定的にハートフルな話かと思うと全然そんなことはなく、きちんと商売としてやってる(むしろ金儲けメイン)し、組織内もギスギスして嫌な感じ。

ランティモス作品に共通する気まずくなるようなシュールな場面も健在。
亡くなった娘のためにテニスウェアを着て父親と寄り添って寝る画は色んな意味で強烈だった。

この映画、面白いのは観てる内に「今画面にいる人たちの関係性は本物か?それとも演じてるものか?」ということが分からなくなっていくといくところ。

主人公は父親と同居をしてるんだけど、その父親も本当の父親なのか最後まで確証が持てない。

さらに後半の場面から、主人公は金儲けとしてだけじゃなく「役割を演じる」ことに呑まれていることも分かる。

どこまでが本当の感情でどこからが演じてる感情か?
この2つはコインの表裏にようにハッキリ分け隔てられたものではく、延長上にある曖昧なものなのかもしれない。

最後の体操少女の表情はそれを表してるんだと思うけどどうだろう。