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ヒットマンズ・レクイエムのFrapentaのレビュー・感想・評価

ヒットマンズ・レクイエム(2008年製作の映画)
4.1
監督特有の宗教観を織り交ぜた一癖ある逃走劇だった。

まず、今作は下らない会話劇が散りばめられているが、そういうシークエンスの有名度はタランティーノが上だ。私はタランティーノ作品鑑賞がだいぶ前で特徴をすぐさま想起させることはできないので、マクドナー監督作品について述べる。
今作の会話は登場人物にどういったバックグラウンドがあったかを想像させるというよりは、終始それぞれ考え方や宗教観が前面に出ていて、それはそれで深みがあった。
多分彼の監督作の人たちは風貌が酷似していても判別がつく。それくらいに上手かったと思う。

次に世界観についてだが、どうやら殺し屋界では子どもを殺すことが禁忌なようで、主人公は劇中でうっかり殺してしまう(結構唐突なのでうっかり感かなり感じた)。そしてやらかした罪の意識と虚脱感がじわじわと芽生え始めて追い詰められていく。
主人公はブルージュを地獄そのものだと称するが、来た時から嫌な予感を察知していたのだろう。ブルージュに始まりブルージュに終わるのも逃れられないカルマを象徴している。
鑑賞前後でブルージュの印象が大きく変わるのがこの作品の力強いところ。冒頭でのクソクソ言ってる主人公を観て、綺麗な場所なのにここが本当に合わないんだと他人事のように思えたが、全てを経験した後にはそのクソの根拠がなんとなくわかってしまう。上述のとおり出口はあるのに全く出られる気がしない不快な違和感が残り続けるからだろう。ヒリヒリと寒気が漂う閉鎖された空間は結構ナイトメアアリーと似たような雰囲気を感じた。

気になる点が一個あって小人の扱いがあまりに酷い。主人公に終始差別発言ぶっかけられるし、最後の展開なんて結局舞台装置感否めなくて、なんだかかわいそうすぎた。

ただ、中盤のツイストがかかった展開に心掴まされて飽きずに観られた。
テンプレートからはいつも逸れるが、考え方が緻密に描かれていて説得力があるため面白い。
非常に"興味深い"監督である。
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