Kuuta

リアル 完全なる首長竜の日のKuutaのレビュー・感想・評価

3.4
「中盤からいつもと違う」という綾瀬はるかの宣言通り、「ホラー風味の虚実の曖昧化→虚実一体の世界へ」というお馴染みの展開(東京が溶け出す中盤まで)から、ある一捻りが入り、ラストはスピルバーグ…というよりはグエムルくらいのスケールだが、怪獣ものの要素が加わる。

(インタビューによると、やはりグエムルは意識したようだ)

「一捻り」が話の着火剤にならず、そこからまったりタイムが20分ほど続くのが残念。死んだ人の無意識ってもっとカオスになってても良かったのでは…?ラストの首長竜のCGがちゃんとしており、アクションは面白かった。

ゾンビが本当に出るのはやりたい放題な感じで笑ったが、黒沢清の考える娯楽描写と、ヒットする邦画的説明の間には解離があったようで、苦労して調整した痕跡が見て取れる。死にかけてる人が船に乗ったらヤバいのは誰が見ても分かるのに、「その船に乗ってはダメ!」を2回も言うとか、少年が首長竜に変わる説明的なカットを入れるとか。首長竜の退治方法のテキトーさは流石に気になった。

死の世界としての海を深層心理の中に描き出し、海底からトラウマである首長竜が這い上がって来る。この舞台立てはインセプションより面白い。やたら飲み物を飲んだり、部屋が水浸しになったりといった演出も楽しい。

佐藤健は階段やエレベーターで意識の「浮上と沈下」を繰り返す。序盤の漫画的な書き割りやフレーミング、鏡の中だけピントが合った(虚実が反転した)撮影。

特に印象的だったのは振り返る動作。序盤は本心の見えない不気味さ演出に過ぎなかったが、中盤に綾瀬はるかと佐藤健が本当の再会を果たす場面では、綾瀬はるかの涙ぐんだ振り返りがとても熱っぽく、目線が繋がった瞬間が感動的だった。

あっち側の世界を「指差す」少年はアカルイミライだなぁと思ったし、過去作ネタはあちこちに。ちゃんと働いてるオダギリジョー、ちゃんと母親してる小泉今日子、船で渡るあの世、壊れた車…。

センシングルームすら終盤風吹いてて笑った。68点。
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