わたぼう

鉄西区のわたぼうのレビュー・感想・評価

鉄西区(2003年製作の映画)
4.5
DVDで買っていて、いつか見るつもりだったのだけど、ワン・ビン傑作選で一挙上映があったので、イメージフォーラムで鑑賞。

9時間越えの545分に、戦々恐々し、おにぎり(権米衛←イメフォそば)やエナジーゼリーなど完備して挑んだのだけど、思いの外、余裕で、あっという間に時間が過ぎた(やや誇張)。やはりワン・ビンは面白い。(そしてまた『青春』が観たくなった。)

とはいえ、2時間→10分休憩→2時間→10分休憩→3時間→10分休憩→2時間と、休憩時間が10分しかなく、トレイの少ないイメフォで、トイレ&食事をその時間内で済ますのが、難易度高かった。

あと、『鉄西区』はなんと読むのか問題。ずっと、「てっさいく」だと思ってたのだけど、「てつせいく」が正解のようだ。偶然にも「鉄製」と被ってて、日本人にはイメージが膨らみやすい地区名でタイトルだ。

イメージフォーラムの場内アナウンスでは「てつにしく」と言ってて、それは間違いすぎだろうと、残念に思った…。(ゆとりの匂いを感じる)

第二次世界大戦時、日本占領下に作られた兵器工場。戦後、中国共産党により、様々な企業のための巨大工場に発展し街まで作られたが、1990年代に入ると業績不振で、閉鎖することになり、その衰退の様子を、この作品では描いている。

雪景色の工場地帯の線路を進む列車のシーンから始まり、とても絵になるこの光景のオープニングから心を掴まれる。ワン・ビンはいつも吸い込まれるような導入がとても巧い。この光景はたびたび出てくるが、どの時代のものも、何度でも見ていられる。

雪景色の工場地帯、列車、赤い灯りの鉛溶解工場、どんな作業なのかよくわからないけど、現代アートのように惹きつけられる。汚い宿舎でのお風呂やおっさんたちのヌードですらも。

第一部は、もうすぐ閉鎖する工場の様子を描いていて、最新作『青春』と比べると、セリフ量は少ない。セリフの面白さでは『青春』のほうが上。ただ、広大な工場と廃墟のような休憩所のシーンは、圧倒的な絵力で、ただ見てるだけでも全然飽きない。

第二部は、閉鎖される工場の様子。天井から落とすホコリのシーンが、とてもアーティスティック…。さらには水道管が破裂して、溢れた水で凍ってしまった床を砕く作業も印象的。工場のトラブルで溶け出してしまった銅の回収など、地面を砕く削岩機のシーンは多く、これらも見ていて飽きない。

第三部は、列車。雪の工場地帯を走る列車は、もうその姿だけで「映画」になっていて、さらにその乗員たちや線路際に住む親子などとのやりとりがさらに面白さを加速させている。

線路際に住む親子は、かなり印象的で、犬をベットの下から引っ張り出すシーンに爆笑。犬がいるにも関わらず、奴らはお構いなく床にタバコの灰を落とす。灰だらけなのに、ちゃんとご主人に寄り添う犬がかわいすぎた…。
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